「全員に退職してもらいます」ジャノメミシン 訪問販売から撤退で営業部員300人に“解雇通告”

「ブラザー」「JUKI」と並び、国内3大ミシンメーカーと呼ばれるジャノメ。9月30日、同社は、2023年3月末で訪問販売事業からの撤退を発表した。そして、訪問販売を担当してきた営業部員約300人に事実上の“解雇通告”をしていたことが「 週刊文春 」の取材でわかった。 【画像】“解雇通告”を放った齋藤真社長  1921年創業のジャノメは、2021年時点での世界市場シェアは5位。連結売上高は429億円、従業員数は約3000名に上る(2022年3月期)。  ジャノメといえば、バブル時代を象徴する経済事件「蛇の目ミシン工業事件」の舞台となった企業だ。 「1990年に表面化した恐喝事件です。蛇の目ミシン工業(当時の社名)の株を買い占め、筆頭株主になっていた仕手筋集団『光進』の小谷光浩氏は1989年、経営陣に株の高値買取りを要求。応じない場合は暴力団に売り渡すと恐喝し、融資の名目で約300億円を脅し取りました。1991年に小谷氏は恐喝容疑で逮捕され、2003年に懲役7年が確定しました」(経済ジャーナリスト)  その後、小谷氏への融資に応じた当時の経営陣5人も株主代表訴訟を提起され、2008年に最高裁で約583億円の損害賠償命令が確定している。創業100周年を迎えた2021年、社名を「株式会社ジャノメ」と変更した。  訪問販売はかつてジャノメの成長をけん引するビジネスの1つだった。ところが、近年はインターネットを中心に販売チャンネルが多様化。訪問販売の需要は年々減少し、最盛期には541あった直営店は2022年9月時点で68にまで減っている。  直営店の店長は「それにしても急です。店舗閉鎖や解雇の話など一切出ていなかった」と語った上で、こう明かす。 「『全店閉鎖が決定しました』と伝えられました。それに伴い、『来年3月31日までに直営店の従業員全員に退職してもらいます』とも言われたのです」  小誌は、ジャノメが訪問販売からの撤退を発表した後に全国の直営店の店長らに向けて送付した書面を入手。訪問販売から撤退する理由を記した紙に加え、人材派遣会社パソナに再就職支援を依頼する書面やパンフレットなどが同封されていた。  前出の店長が言う。 「訪問販売事業全体で見ると、確かに赤字が続いていました。しかし、それでも店舗ごとに成績の幅があった。赤字が続いている店舗を先に閉めるなど、他に打てる手がまだあったのではないでしょうか……」

社長、常務を直撃すると…

 ジャノメの齋藤真社長を直撃したが、 「そこは色々と交渉中ですから、お答えすることはございません」  社長に代わり、広報担当の大島毅之常務執行役員がこう答えた。 「『解雇』とは言っていないですけどね。今、色々お話し合いをして、円滑なご退職に向けて、鋭意、制度についてご提示しているところです。(解雇回避の努力については)長年の歴史の中で、なるべく直営店の固定費を削減するなど見直しは進めてきた。不採算店の統合などもこの10年、ずっと繰り返してきましたから」  創業100年を迎えた老舗ミシンメーカーで何が起きているのか。  現在配信中の「 週刊文春 電子版 」では、全国の直営店の店長の元に説明に来た幹部が放った言葉、ジャノメの人員整理に関与しているパソナ社員が本社で実施した講習の内容、現場の従業員が感じていた“解雇通告”の予兆などを詳しく報じている。

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