「公共事業=悪」の偏見でインフラが崩壊する

アベノミクスや東京五輪の決定で、住宅・オフィスビル需要が増え、建設ラッシュに沸いているというニュースをよく聞く。しかし、一方で地方の公共事業では、入札不調が数多く起きている。その原因のひとつが、深刻な建設作業員不足だ。現場ではいったい、何が起きているのか? 末端の土建会社や作業員に徹底取材した!
◆無慈悲な役所と「公共事業=悪」で、インフラ崩壊危機!
 建設業の中でも最も高齢化と若手離れが進む土木工事の現場からは、こんな声があがる。
「災害時、どうするんですかね。ウチらは役人でもボランティアでもない。それなりに見合った賃金を出してもらえずに、普段は散々競争させられて、いざ何かあったときに協力しろなんて言われても難しい。実際、東日本大震災のときも市の建設業協会の中で24時間体制で土砂の撤去や復旧作業をやれる業者を募ったが、応じたのはわずか数社しかなかった」
 こう語るのは、土木作業員のU氏(47歳)。これまでマスコミはさんざん「公共事業=悪」の刷り込みをしてきたせいか、住宅街で「9時から5時」の看板を出して作業をすれば、5時を1分でも過ぎると住民から苦情が入る。
「ウチは震災復旧工事を請け負ったけど、現場は不満タラタラでした。昼間に2~3時間しか手伝わない業者もいたなか、ウチらのように24時間やった業者に、お役所はその後、何の色づけもない。これじゃ心情的に納得できない」
 建設会社幹部のT氏(44歳)は「既存インフラの維持管理や災害による復旧については、行政側から依頼されたインフラ企業や大手ゼネコンが下請けに圧力をかけて工事をさせる構図は永遠に変わらない」とは言うが、最末端の下請けであるU氏の将来予測はかなりシビアだ。
「今年2月の大雪の際にも、区が土木業者に声をかけたところ、重機を出せる会社が9社中2社しかなかった。ほかは自前の重機が排ガス規制に引っかかったり、オペレーターの用意ができなかった。結局、復旧に大きな時間がかかってしまった。仮に首都圏直下型地震が起きても、動ける業者はどれだけいるか。インフラの早期復旧は絶望的でしょうね」
 インフラの維持・復旧は、災害時だけのことではない。このままでは、穴だらけの道路が放置されるような国になるのかもしれない。

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