「出島」の魅力民宿から 宮城・女川の離島に仙台から移住の佐藤さん、唯一の宿泊施設継ぐ

宮城県女川町の離島・出島(いずしま)唯一の宿泊施設「民宿いずしま」が東日本大震災の発生から7年となる今年3月11日、営業再開した。昨年閉鎖されたものの、仙台市の元会社員男性が移住して経営を引き継いだ。震災の打撃を受け、島民はピーク時の10分の1以下に激減した。過疎化する島の魅力を発信しようと、試行錯誤を続けている。
民宿経営に乗りだしたのは佐藤淳さん(53)。本格的な観光シーズンに向けて「海を見ながらコーヒーを飲めるウッドデッキを作ったり、宿の周りでバーベキューをやったり、島の魅力を感じられる宿にしたい」と意欲を示す。
民宿は昨年6月、1人で切り盛りしていた経営者が高齢のため店じまいした。3カ月後、佐藤さんは経営者の知人に連れられて初めて島を訪問。「宿を譲りたい」という話を聞き、考えた末に移住を決断した。
佐藤さんは約30年勤めた仙台市の飲食業関連の会社を昨年6月に退職した。盛岡市出身で出島とは縁もゆかりもない。「真っ青な海や満天の星空に魅了されてしまった」と話す。
出島は女川港から東に約7キロ。本土との行き来は1日3便の航路が頼りだ。最盛期に約1800人いた島民は震災前に約500人に減少。震災後は人口流出が加速し、今年3月末現在で133人になった。
震災では住民25人が犠牲になった。民宿も建物が傾くなどしたものの、復旧・復興事業の工事関係者らの拠点としての役割を担ってきた。
民宿の再開を地元住民は歓迎する。島で長年暮らす男性(69)は「震災後、本土の災害公営住宅に多くの人が移り住んですっかり寂しくなってしまった。新たな住民が増えてうれしい」と喜ぶ。
2022年度には島と本土を結ぶ出島架橋が完成する予定。観光客の受け入れ態勢などの課題もあるが、島内に宿泊施設が存在する利点は大きい。佐藤さんは「民宿を島内外の人が集う憩いの場にしていきたい」と話している。

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