3本入りで定価400円ながら、とあるフリマサイトでは1200円の高値で転売。実はこの商品は、神奈川県の横須賀刑務所で製造されているものだ。
刑務所の受刑者たちが作った製品の専門店「キャピックショップ中野」(東京・中野区)では、売上全国ナンバーワン商品がブルースティックで、2022年は年間約4万9000本販売したという。
あまりの人気で、公式オンラインショップでは、すべて品切れ。店頭では1家族6組までと制限されている。新宿駅でのイベントでも「爆売れ」。購入者はその魅力を語る。
「子どもが小さいので、汚れ物を洗うのに役立つ」
「Yシャツとかの汚れに塗って、揉んだ後、すすいで洗濯機に入れて洗っている」(購入者)
えり袖の黄ばみや、靴の泥汚れ、食べこぼしなどが落ちると評判だが、コロナの影響で刑務所内での作業時間が減り、生産量が減少したことにより「レアもの」となっている。
石けん・洗剤を40年研究する、横浜国立大学の大矢勝名誉教授に、ブルースティックの洗浄効果を聞いてみた。
「なかなかいい成分が入っている。純石けん分(脂肪酸ナトリウム)は石けんの成分、ケイ酸塩はアルカリ剤。アルカリ成分は汚れと繊維の間の付着力を弱め、泥汚れなども落ちやすくなる」(大矢名誉教授)
大矢氏によると、クリーニング用合成洗剤に入っているケイ酸塩と、2種類の界面活性剤によって、繊維に染みこんだ頑固な汚れを落ちやすくしているという。
「泥汚れや墨汁の汚れは落ちにくい。普通の洗剤液に浸して、シャバシャバしても、ほとんど落ちてくれない。ところが、これ(ブルースティック)は布に擦り付けて使う。その際に、石けんが中にグイグイと押し込まれて、奥の方で繊維に絡まっている汚れと成分が交わる。そしてそれを取り除く」(大矢名誉教授)
加えて、握りやすい形状であり、ほどよい柔らかさ・硬さで「サッサッって塗れる」ところもポイントだと大矢氏は話す。主体となる界面活性剤が「従来のものとは工夫がなされて、いいものになっている」うえに、摩擦を起こしやすくしているのが特徴であると太鼓判を押した。
ではなぜ、刑務所でしか作れないのか。
大矢氏は「実は作れるが、石けんの会社と、合成洗剤を主に作っているところが、どちらかというとライバル関係。石けんを作っていたところは『合成洗剤は悪い』とやっていたので、石けんと合成洗剤を混ぜることに、なかなか手を出しにくかった。ヨーロッパなどでは、当然のこととしてやっている」と業界の関係性を挙げながら、刑務所ならではと解説した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)