2007年04月10日
「懲役10年に処する」。判決の瞬間、被告は正面を見据えた。諏訪市などで昨年4~5月、連続9件の放火をしたなどとして、現住建造物等放火罪などに問われた諏訪市湖南、飲食店手伝い、平田恵里香被告(21)。芸能界にあこがれ、「くまぇり」と名乗り、自らが放火した火事について、ネット上で「雄弁」に語ったが、法廷では時折うつむきながら、静かに判決内容を聞いた。
長野地裁松本支部(峯俊之裁判長)は9日、平田被告に懲役10年(求刑懲役13年)の判決を言い渡した。
紫色の上着に、白のジャージー姿の平田被告は、髪を後ろで束ね、淡々とした表情で入廷。被告人席の右後ろには、いつもと同じく父親らが座る。
判決によると、平田被告は昨年4月13日未明、諏訪市での木造物置への放火をきっかけに、母校の同市立諏訪西中学校の旧体育館を全焼させ、茅野市のアパートの壁を焼損させるなど、約1カ月半の間に連続9件の放火をした。
判決では、次第にエスカレートし、愉快犯的な動機になっていく被告の姿が浮かび上がった。最初の物置の放火は「自動車を運転し、交差点を左折する際に邪魔だから」。2件目の放火で「自由に使える時間がないことでいらだっていた気持ちが晴れていくように感じ、わくわくして、楽しくてたまらないという気持ち」となり、その後の放火は「報道され、自分が住んでいる諏訪地方が有名になるように感じ、楽しい」へと変わっていった。
一方、諏訪西中の放火は、「仲間内でいじめを受けるなどしたため、中学校を燃やして嫌な過去を消し去りたいと思った」とした。
ホームページのブログで、自らが放火した火事を携帯電話のカメラで撮影して掲載するなど、特異な一面を見せた平田被告。判決は「火事の様子を撮影してブログで公開するなどして楽しんでいた」と厳しく指摘した。
判決の最後、峯裁判長が「あなたはまだ若い。社会復帰してからの時間の方が長い。反省し、罪を償い、自分の生きる道を探って欲しい」と諭すと、平田被告は小さな声で「はい」と答えた。
判決後、平田被告の父親(61)は「仕事に忙しく、娘から母親を取り上げた寂しさがこういう事件になったのかなぁと思う」と時折、声をつまらせながら話した。
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全焼した諏訪西中の旧体育館は、現在更地のまま。基礎部分のコンクリートがわずかに名残をとどめている。石塚弘登校長は「放火がいかに反社会的なことか心から反省してほしい」と語り、卒業生でもある平田被告については「社会に貢献する人になってほしい。若いから立ち直ると思う」と話した。
平田被告は今年1月、茅野署の留置場の留置室内トイレで自殺未遂を図った。月刊誌「創」に寄せた手記の中で、平田被告は自殺未遂について「もう二度とやりませんよ。あんな苦しくて、いたい事。もういやです」と記している。一方、「一番楽しみたい20代を刑務所で過ごさないといけない。なんかもう気がぬけて人生おわったと思っています。本当人生おわりです」と書いた。
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