「初任給15万、飲み会は強制参加」…入社3か月で辞めた新入社員が絶望した“劣悪な環境”

新年度を迎えたばかりではあるが、SNSでは「新入社員が辞めた」という投稿が早くも散見される。実は、筆者も10年近く前に新卒入社してから3か月で辞めた“早期退職組”。なぜ早々に退職したのか、今回はその経緯を振り返ってみたい。
◆手に職をつける必要性を感じていた

 大学1年生の時にリーマンショック、大学3年生の時に東日本大震災が起きた。そのため、いざ大学4年生になって本格的に就活を始めても、景気や環境に左右されながら会社勤めすることに不安感が芽生え、漠然と“手に職をつける”ことの必要性を覚え始める。

 そして、「手に職をつける仕事とは?」と考えながら就活を続けるなかで、リラクゼーション(整体)サービスを提供している会社の説明会に参加した時に「これだ!」という直感を抱いた。その後、晴れてボディケア系の会社から内定をもらって働き始めるが、今思い返してもなかなかあこぎな会社だったと思う。

◆研修中は無給で、交通費も自腹…

 セラピスト(ボディケアをする人)として店舗に配属される前、約2週間都心にある研修センターで技術指導を受ける必要がある。どんな会社でも研修期間はあるだろうが、筆者が入社した会社では研修中に給料は発生しなかった。交通費も支給されず、一切お金にならない。

 なぜこのような理不尽が一般化されていたのかというと、筆者だけでなく研修参加者はもれなく「業務委託」として契約していたことにほかならない。会社側としては「技術をタダで教えてあげている」というスタンス。研修のインストラクターも「嫌なら辞めて良い」とちょくちょく口にしており、自己判断で無給研修に参加している私達に“会社を責める”という発想はなかった。

 ちなみに、この研修に参加するためには、会社が独自に作った教科書などを数千円で購入しなければいけない。加えて、「実際に店舗に行って施術の感想を報告する」という宿題も課される。当然施術の代金もこちらが負担。従業員をも“顧客”として考えており、その巧みさには今思い返しても驚かされる。

◆「機嫌を取るため」無駄な時間を過ごした

 個人的に研修で一番しんどかった要因は、30代の男性インストラクターである。研修時間は9時~19時ではあるが、いつも帰るのは21時ごろ。なぜ時間内に帰れないかというと、研修期間の最終日に技術や接客に関する試験があり、合格しなければ店舗に配属されない。つまりは合否を決めるインストラクターの機嫌を取っておく必要がある。

 インストラクターは、「残業=やる気」という価値観を有しており、長く残って練習することがいかに正義であるかを度々話していた。そのため、19時で帰る人間は皆無。ご機嫌取りのために研修センターに長くいなければいけないことはとても辛かった。

 また、試験に合格していよいよ研修センターとおさらばできると思った矢先、同期の人達数人がインストラクターに感謝の意を込めてプレゼントを渡そうと言い出した。そして、そのプレゼント購入のためのカンパを始めたが、これには「なぜお金をさらにむしり取られければいけないのか!」とブチギレそうになった。しかし、同調圧力に屈して泣く泣く数百円を寄付せざるを得なかった。みんなで仲良くプレゼントを渡している時のおめでたい雰囲気は今でも忘れられない。

◆初任給は「額面で15万円」だった

 研修の段階で会社に対する不信感は溜まっており、店舗配属後から辞めるまではあっという間だった。結論から言うと、退職した理由は「給料」と「飲み会」である。業務委託で働いているため、施術をしなければお金が発生しない。つまりお客さんが永遠に来なければ月給0円だ。筆者が配属された店舗は腕のあるセラピストが揃っており、噂によると他の店舗よりも来客は多いらしいが、それでも最低時給を下回る日は珍しくない。

 初任給は額面で15万円、次の給与は同じく額面で20万円ほど。当然ながら手元に残るお金はかなり少ない。1人のワーキングプアの出来上がりである。「フリーターのほうが稼げるじゃん」と思ったことがキッカケの1つである。

◆「飲み会に参加しなきゃ死刑」と言われる

 金銭面に加えて退職を後押ししたのが、旧態依然とした飲み会文化。研修期間を除くと筆者が参加した飲み会は計2回で、内訳は筆者を含めた「新入社員の歓迎会」と転職が決まった人を送り出す「送別会」だった。

 歓迎会では一発ギャグをやることを命じられた。筆者の同期には女性もいたが体育会系の色合いが濃く、そういった“楽しい無茶振り”は男性の仕事。当然滑ったが、それ以上に道化を演じさせられたことに心底悔しさを覚えた。今でもしっかりトラウマとして残っている。

 ただ、送別会では何事もなかったが、ただただつまらない時間を過ごすのみ。そこで「二度と会社の飲み会には参加しない」という決意を固める。そして、3回目の飲み会が開催されるとなった時には、強い意志を持って不参加を表明することに。ただ、後日男性の先輩から飲み会に参加しなかったことを咎められ、「男は飲み会に参加しなきゃ死刑だから」と吐き捨てられた。一発ギャグの件と同様、女性の同期には飲み会参加を強制していない。男性という理由だけで理不尽を何度も経験させられたことに憤りを覚え、勢いそのままに退職した。

 ちなみに、その会社は今でも当時と同じような求人を出しており、その内容を見る限り有料研修は継続している様子。ボディケアの仕事自体は楽しくやりがいもあり、同僚の中には優しい先輩も少なくなかった。とはいえ、世間知らずの若者が搾取され続けるだけの環境に思える。似たような職場で働く人がいたとしたら、一度自分のキャリアについてしっかり考えてほしい。

<TEXT/望月悠木>

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