「利益率8割で年収600万円」焼き芋屋店主が明かす “儲けのカラクリ”

 北風が吹く寒い季節になると、焼き芋が無性に恋しくなる。石焼き芋のあったかさや香ばしさは、心までホッとさせ、郷愁をそそられる。だが、焼き芋業界の裏事情を知ると、そんな素朴なイメージはたちまち吹っ飛ぶ。焼き芋屋ほど儲かる商売はなく、月収50万円・年収600万円もざらだというからだ。

 なぜ儲かるのか? 茨城県の牛久駅前で、石焼き芋の軽トラ移動販売歴15年という60代後半のベテラン業者に、儲けのカラクリを聞いた。

「儲かる理由? 簡単だよ。焼き芋っていうのは、『安く仕入れて高く売れる』から、利益率が高いってことよ。スーパーの一般商品だと、利益率はせいぜい2~3割だが、焼き芋は7~8割が利益になる。モノによっては、これ以上なんだ」

 では、焼き芋の利益率は、なぜそんなにも高いのか。

 焼き芋にも、流行り廃りがあるという。以前は水分が少なく、ポクポクした焼き芋が好まれたが、最近はねっとりなめらかな食感のものがブーム。これは女性に好まれる味を追求した結果で、ポクポク系を和菓子の味とすれば、ねっとり系は洋菓子のスイーツの食感をイメージしたものだという。

 そのため、栽培段階から女性を意識した品種が次々と開発され、かつての「紅あずま」に代わって、現在は「紅はるか」「シルクスイート」などが主流になっているという。

 焼き芋ブームは食感だけでなく、販売方法にも変化をもたらし、いまやスーパーやコンビニも販売に乗り出している。しかし、移動販売でも店舗販売でも、焼き芋業者は芋問屋からネタ(生芋)を仕入れることに変わりはない。

 さつま芋には、大雑把に分けて2L、L、M、S、SSの各サイズがある。サイズは、重量で決まる。Lは1本あたり約300g~210g、Мは210g~130g、Sは130g~80gが目安だ。

 だが、芋問屋が複数の農家から芋を大量に仕入れる際には、サイズもごちゃ混ぜで、さらには売り物にならないような規格外の芋もまとめて10kg~20kgという単位で一括購入する。

 農家としては選別する手間もいらず、本来なら廃棄処分するような芋もまとめて売れるため、芋問屋は安い価格で大量の生芋を仕入れることができるわけだ。

 仕入れ後、サイズごとの選別は芋問屋がおこない、選別後、湿度と温度を一定に保った “ムロ” に、2カ月ほど寝かせる。これは、さつま芋を熟成させ、糖度を高めるためだ。

「ムロなどの大規模施設を備えているのは、芋問屋。小売業者にはないから、熟成された芋を問屋から仕入れることになるが、ここに焼き芋屋が儲かるカラクリがある」(同前)

 どのようなカラクリが?

「今が最盛期の『紅はるか』でいえば、芋問屋はМサイズの芋10kgを1500円で小売業者に売る。Мサイズ10kgは本数なら50本ほどだから、1本あたりの単価は30円くらいになる。

 これが焼き芋になると、スーパーの店頭では1本250円くらいで売られるから、消費者が買うときには8倍にも値段が跳ね上がっていることになるんだ」(同前)

 これは、店舗販売でのこと。「深夜」や「駅前」といった付加価値がつく軽トラ販売となると、Lサイズ500円、Мサイズ400円、Sサイズ300円でも売れるというから、利益率はさらに高くなるわけだ。

 しかも、焼き芋屋の儲けのカラクリはこれだけではない。農家から仕入れた中に混ざっていた、規格外のさつま芋まで焼き芋にして売るからロスがなく、業者は焼き芋のようにホクホク、笑いが止まらないのだ。ある、さつま芋の生産者は、こう打ち明ける。

「焼いてしまえば、キズなんて焦げでわからなくなるしね。うちでは規格外のМサイズを5kg(約25本)300円で売り渡しているが、これが焼き芋になると1本400円で売ってるんだからたまげたよ」

 つまり、1本10円程度の規格外の芋が、焼き芋として販売されるころには40倍もの値段に吊り上がっているのだ。

「焼き芋屋は、月収50万円どころかそれ以上になるよ。だってそうだろ、Мサイズ1箱20kgを仕入れると、中に100本の芋が入っている。それを1本250円で売れば、1箱で2万5000円。1カ月に20箱=400kgは楽に捌けるから、50万円なんてチョロいもんだよ。

 しかも焼き芋は、生芋をそのまま焼くだけだから手間暇がかからず、焼き加減さえわかれば素人でもできる、簡単な商売なんだよ」(前出・移動販売業者)

 焼き芋業者の儲けのカラクリを、知れば知るほど納得する。たかが焼き芋、されど焼き芋。転職するには、もってこいだ!

タイトルとURLをコピーしました