税制のあり方を議論する岸田文雄首相の諮問機関「政府税制調査会」(翁百合会長)が13日に開かれた。長い歴史を持つ政府税調で初の女性の会長が就き、委員に占める女性の割合もようやく4割を超えた。新体制での議論のキックオフとなったこの日は、「配偶者控除」の見直しを求める声が相次いだ。
「すでに制度上の壁はなくても、制度が人々の価値観を変えてしまった。短く働くことがいいことだという雰囲気をつくってしまった」。労働経済学が専門の奥平寛子・同志社大院准教授は、こう指摘した。
配偶者控除は、配偶者の年収が基準より少ない場合に所得税を軽減する仕組み。多くはパートなどで働く既婚の女性が、夫が支払う所得税の配偶者控除の基準となる「103万円の壁」を越えないよう、働く時間を抑える「就業調整」につながっているとして問題になってきた。現在は「特別控除」を導入することなどで、年収103万円を超えても世帯の手取り収入が逆転しない仕組みになっている。だが、実際には「103万円」という水準が企業の配偶者手当の支給水準に採用されているケースがあり、心理的な壁もあるとされる。
奥平氏は「すでに壁は消失しているが、複数のデータを確認すると、103万円前後で調整しながら働いている人は非常に多い」として、「制度上の壁をなくして終わりでいいのか。配偶者控除が所得の再分配の機能を果たしているのか、丁寧にデータを見ていく必要がある」と問題提起した。