「厄介者」をラーメンのだしに 七ヶ浜産のイワガニ、「だし廊」と漁協が商品化

宮城県七ケ浜町で水揚げされるイワガニが、冷凍ラーメン用のだしとして活用されている。これまで買い手がいないため廃棄されていたが、仙台、名取両市でラーメン店「だし廊」を展開するブロスアップ(仙台市)と県漁協七ケ浜支所が連携し、商品化にこぎ着けた。海の幸を活用して国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献しつつ、地域PRを目指す。
(塩釜支局・高橋公彦)

カニみそのうまみ溶け込む

 商品は平打ちの太い縮れ麺(150グラム)が入った「七ケ浜ブラック」。イワガニで取った黒みがかっただしを使ったスープ(300cc)がセットになっている。スープは濃縮ではないストレートタイプで、塩だれを入れて仕上げてある。

 価格は1食750円。ブロスアップのEC(電子商取引)サイトや、七ケ浜支所、町観光協会で5月下旬から取り扱っている。イベントなどでの販売も検討されている。

 ブロスアップは、マグロの頭部など廃棄される食材をだしとして使う「アップサイクル」事業に取り組んできた。同社の原田佳和社長(37)は「イワガニのみそのうまみがだしに溶け込んでいる。スープのインパクトに負けない1番人気の平打ちの太麺と一緒に楽しんでほしい」と話す。

 脚を伸ばすと20センチほどの大きさになるイワガニは身が少なく、町内ではみそ汁の具などとして消費される程度だった。近年は他の魚介類に交じって水揚げされても値段が付かず、廃棄処分になっていたという。

 七ケ浜支所は町内でイベント企画を手がける法人「しちがはまツーリズム」と共に、イワガニなど未利用の魚介類の活用法を模索してきた。しちがはまツーリズムの仲介でブロスアップとの連携が決まり、3月にご当地ラーメンの開発に着手。賞味期限の長さ、在庫管理の容易さなどから冷凍商品にした。

 しちがはまツーリズムの鈴木若子さん(41)は「地元を見直すことで新しい価値が生まれた。1人では難しくてもそれぞれがアイデアなどを持ち寄れば持続可能な取り組みが広がり、SDGsもさらに身近になる」と強調する。

 材料となるイワガニはブロスアップが支所を通じて買い取る。同町の漁師寺沢善二さん(75)は「子どもの頃はずいぶんイワガニを取ったが、今では網に絡まる厄介者。継続して利用してもらえれば収入増につながる」と期待した。

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