「厄年」「天中殺」をどう乗り切るか…霊感・開運商法にご用心

新年を迎えると、初詣をして自分が厄年であることに気づいたり、おみくじや占いで凶運を告げられたりすることがある。こんな時に注意したいのが、 開運商法だ。誰でも抱いているようなささいな悩みにつけ込み、「放っておくと死ぬ」などと脅して正常な判断力を失わせ、祈祷(きとう)料などとして法外な 金銭を請求する。被害に詳しい弁護士は「自分はひっかからないと思っている人が多いが、誰でも被害者になりうる」と警鐘を鳴らしている。(加納裕子)

■厄年は「役年」

そもそも厄年とは何なのか。厄払いで知られ、年間約80万人が訪れる門戸厄神東光寺(兵庫県西宮市)の松田俊教住職(70)によると、昔は神社仏閣で何ら かの役を務めるために精進潔斎する「役割の年」だったという。その後、中国から災いの厄という考え方が伝わり、現在の厄年に変わった。

た だ、松田住職は「迷信だけではなく、実際に何かが起こりやすい年齢でもある」という。たとえば男性の大厄である42歳(数え年)。働き盛りで仕事が集中す る立場だが肉体のピークは過ぎており、心身の不調が起きてもおかしくない。女性の大厄33歳(同)は、晩婚化が進んではいるものの結婚して子供がいること も少なくない。育児疲れや夫婦の倦怠(けんたい)期などに、やはり気をつけるべき年齢だ。

「まわりが見えなくなりがちな時期なので、一服して家族や部下などの状況を落ち着いてみわたすことが大切です。注意を払えという先人の知恵と考えるといいでしょう」と松田住職。

■人生は山あり谷あり 悩むからこそ知恵も出る

また、厄年以外にも、一部の四柱推命などでは12年のうち2年間を「空亡」と呼び、時間と空間がかみあわなくなるため今まで流れていた運命がリズムを崩すとされる。この年回りは天中殺とも呼ばれ、いずれも運気が著しく低下するとしている。

ただ、易学や運命学の専門家らでつくる公益社団法人「日本易学連合会」近畿支部の認定鑑定士、武藤素宗さん(70)は「十干と十二支を組み合わせた際に、 2つ余った十二支にあたる年をそう呼んだだけ。重視しない人もいます」とあっさり。「想定外の不都合なことが起こり、慌てて行動してもうまくいかないとき に人は『運が悪い』という。そうならないように事前にその時期を予測し、そのときには慎重に行動すれば大丈夫です」。

同連合会近畿支部長を務め、九星気学を使う朱麗華さん(67)は、悪い「気」も方角や時間を変えることで回避できるとしている。また、「人生には山もあれば谷もあります。トラブルがあってもどう乗り越えるかが大切で、悩むからこそ知恵が出てくると思っています」という。

■悪徳、4カ月で400万円 不幸でもない人の不幸作る

それでも、悪運をことさらに強調して開運グッズや祈祷、献金を強要する霊感商法による被害は後を絶たない。霊感商法被害に詳しい加納雄二弁護士(大阪弁護 士会)は「ひどい場合は不幸でもない人の不幸を作り出し、『このままでは子供が死ぬ』などと脅迫する。だれもが被害に遭う可能性があります」と指摘する。

大阪府内の60代女性は、平成24年、約2万円の開運ブレスレットを購入したことをきっかけに、東京都板橋区の業者と連絡を取るように。「霊が災いしてい る、水子が足を引っ張っている。あなたの娘が悩んでいるのもそれが原因だ」などとして、祈祷料36万円を支払わされた。

その後も、「先祖には人をあやめた者もいる」などといわれて「ここで供養しなければ克服できない」と思い込み、約4カ月の間に計約418万円を献金。疲れ切って弁護士に相談し返金を求めたが、約100万円しか取り戻すことはできなかったという。

神戸山手大学現代社会学部の村上幸史准教授(社会心理学)によると、多くの人が過去に、備えを怠ったことで後悔した経験をもっている。「悪い運勢を聞くと、将来後悔することを予期し、それを防ぎたいという強い思いを抱くことは珍しくない」という。

■悪いことほど“的中感”強く

また、村上准教授の研究で、占いを信じる人はポジティブな結果よりもネガティブな結果をより「的中した」と認識する傾向があることが分かっている。自分で コントロールできない過去や未来のネガティブな運勢を強調する霊感商法は、こうした心理を巧みについた手口だといえそうだ。

どうすればこ うした被害に遭わずにすむのか。武藤さんは「運命などを強く決めつける人に話を聞くのは避けた方がいい。誘導され、だまされることにつながります」とアド バイス。加納弁護士は「高額の祈祷料を払ったから悩みが消えるということはありえない。悩みを話せばつけ込まれるので、自分の悩みを簡単には言わないこと が大切です」と話している。

タイトルとURLをコピーしました