人々を笑わせ、考えさせた研究に贈られるイグ・ノーベル賞の栄養学賞に、東京大の中村裕美特任准教授と明治大の宮下芳明教授が輝いた。日本人の受賞は17年連続。2人は、箸やストローに電気を流すと、食べ物の味が変わることを明らかにした。 【写真】「初恋の味」再現できる? イグ・ノーベル賞宮下教授のユニーク装置 受賞した研究は2011年の論文。当時、大学院生だった中村さんが、研究テーマとして「電気味覚」に興味を持ち、指導教員の宮下さんと取り組んだ。 電気で味を感じることは昔から知られており、舌に電気を流すと金属っぽい味がすることなどが報告されていた。舌などにある味覚を感じる受容体が、電気刺激を受けたことで生じる感覚だという。ただ、食べ物と結びつけた研究はなされていなかった。 電気を流した食品はどんな味がするのか。 中村さんは試しに、微弱な電気を流した寒天を舌の上に置いてみた。スイッチを切ったり入れたりすると、一瞬で味が変化。予想はしていたが、「こんなにはっきり変わるんだ」と驚いたという。 食卓で使うことを想定し、箸やストローに陽極と陰極を取り付け、チーズを食べたり、スポーツドリンクを飲んだりすると味が変わることを確認した。 学会でデモンストレーションをすると、ほとんどの人が味の変化を感じた。金属っぽい味だけではなく、「味がぎゅっとする」「塩味が濃くなる」などと言う人もいたという。