フランス・ボージョレ地方の新酒「ボージョレ・ヌーボー」の解禁日(今年は19日)に合わせたイベントが進化してきた。
食事と組み合わせた従来の形式に加え、婚活イベントと組み合わせたり、電車の車窓を楽しみながらワインを楽しむなど多様化しているのが特徴だ。実は、ボー ジョレはかつてのブームが一服し、販売量も落ち込んでいるのだという。専門家は「ハロウィーンとクリスマスの間にお祭り騒ぎを楽しむイベントになれば生き 残る」と指摘する。(栗井裕美子)
ブームは収まる
ボージョレの輸入販売を手掛けるサントリーワインインターナショナルによると、ボージョレが日本に上陸したのは30年ほど前という。次第に、時差の関係から本場フランスより早く解禁される特別感もあって人気が過熱した。
しかしピークの16年に比べ近年の販売は4分の1程度で推移している。同社は「ブームが収まった」とみているが、これ以上の販売量の落ち込みは避けたいところだ。
同社によると、ブームが一服した後は、ボージョレの解禁日を「ワインを飲む日」として認識している人が多いという。近年、そんなお祭り気分を盛り上げるようなユニークなイベントが増えている。
ボージョレで婚活
トータルマリアージュサポート(大阪市中央区)は23日、同市北区の同社「フィオーレ 梅田サロン」で30~40代の男女を対象としたお見合いパーティー「ボジョレーナイト☆婚活パーティー」を今年初めて企画する。
ボージョレを飲みながら会話を楽しんでもらい、ボージョレを飲み比べるゲームなどで盛り上がってもらう。参加費は男女ともに8千円。吉末育宏社長は「旬のワインを取り入れることで会話が弾むきっかけになる」とカップル誕生の効果を期待する。
近畿日本鉄道は19日、ボージョレを提供するツアー「近鉄“ぐるっ”とまわる『ボジョレー・ヌーヴォーTRAIN2015』」を企画している。
三重・伊勢志摩方面で運行されている観光列車「つどい」を特別に使用し、午後7時に大阪上本町駅(大阪)を出発し、橿原神宮前駅(奈良)、大和西大寺駅(同)を経由して午後10時前に大阪上本町駅に戻るルートだ。
ボージョレの750ミリリットル入りボトル2本とおつまみが提供され、他の飲食物の持ち込みもできる。初開催だった昨年と同様、今回も満員御礼(定員70 人)になった。ルートの沿線住民が仕事帰りに利用するケースもあり、同社は「車窓から夜景を楽しみながら解禁されたばかりのワインを飲むという特別感が人 気のようだ」と話す。
イタリア産など、近年流行しつつある世界の新酒と組み合わせるイベントもある。リーガロイヤルホテル(大阪市北区) は19日、ボージョレに加え、オーストリアの新酒「ホイリゲ」やイタリアの新酒「ヴィーノ・ノヴェッロ」など他国の新酒を中心に計10種類以上取りそろえ て、ワイン通のニーズに応える。
定着への課題
ボージョレについて、ワインの流通などに詳しい中央大学商学部の原田喜美枝教授は「割高感から販売促進が難しい商品だ。市場の定着には課題が多い」と指摘する。
解禁日に合わせるため空輸するため、そのコストが価格に上乗せされ、古い年代に生産されるほど高価になるワインのなかでは、味に比べて割高感がある。新酒という季節感を売りとしているため、販売できる期間が短いことも理由に挙げる。
そのうえで、原田教授は「味そのものというより、ハロウィーンとクリスマスの間のイベントとして、お祭り気分を楽しむ方向で活用されれば生き残ることができる」とする。
ボージョレは、クリスマスなど外来文化と同じく日本市場で再び存在感を高められるか。イベントの多様化がそのカギを握りそうだ。