「商品テスト誌」復活の兆し 食品、化粧品、家電…厳しい消費者の目に応える

市販されている商品を中立的立場で安全性や品質のテストをする商品テスト。日本では一時、商品テストを掲載する雑誌の廃刊や雑誌の企画としての商品テストの中止が相次いだ。しかし昨年、主婦向けに新たな商品テスト誌が創刊され、好調な売れ行きという。(平沢裕子)
 日本の商品テスト誌の先駆け的雑誌『暮しの手帖』(暮しの手帖社)は、コストと人手がかかることなどを理由に、26号(平成19年2・3月)を最後に商品テストを中止、現在は主に暮らし方を提案する雑誌となっている。
 国民生活センターの『たしかな目』は20年に廃刊。同センターは、製品関連事故の原因究明や品質性能などにかかわる商品テストを今も継続し、インターネットのホームページで公開している。日本消費者協会も『月刊消費者』で商品テストの結果を掲載していたが、18年4月号で商品テストを廃止、雑誌自体は23年4月に休刊した。
 古くからある商品テスト誌が姿を消す中、昨年7月、「テストする女性誌」をキャッチコピーに、30、40代の主婦をターゲットにした商品テスト誌『LDK』(620円)が創刊された。食品や化粧品、家電製品など女性が日常的に使う商品をテストし、その結果を掲載している。
 2月号ではリップクリームを特集。7社13商品について、保湿力、使用感、成分内容、価格を比較し、総合評価で1位から12位までランキング、1商品については「指定成分しか表示されていない」ことを理由に判定不能とした。
 発行する「晋遊舎」(東京都千代田区)は、主に男性をターゲットにしたテスト誌『MONOQLO』を平成19年に、家電製品に絞ったテスト誌『家電批評』を20年にそれぞれ創刊しており、『LDK』はテスト誌として3冊目。いずれも公称15万部で、「広告に依存しないで製品の本当のことを書く」を基本スタンスにしているという。
 LDKの沢井竜太編集長は「ネットの普及で、例えば、タイアップ広告のように以前は業界関係者しか知らなかったことを一般の人も知るようになった。消費者が賢くなり、製品を見る目が厳しくなる中、客観的なテスト結果を参考にしたいという人が多いのではないか。洗剤などのテスト記事はかなり反響があり、『こんな記事が読みたかった』と好評だった」と話す。
 ただ、商品テストはテストする側のスタンスによって結果が異なることも珍しくない。消費者がテスト結果を判断する目安として、テスト方法の選択理由や評価基準、評価員がどのような人かなどの情報は不可欠だが、同社は「企業秘密」として開示していない。
 消費者教育に詳しいMSマーケティング代表の真鍋重朗さんは「商品テスト誌は、企業が発表するメリット情報だけに振り回されることなく、消費者が自主的に商品を選択するのに役立つ。結果の中立性や公正性を消費者に示すためにも、テストに関する情報は全て開示してほしい。消費者も結果をうのみにせず、自分に必要な物は何かを考え、商品を選ぶことが大事だ」と話している。
 商品テスト誌を参考に商品を購入する人が多いドイツでは、商品テスト財団の『テスト』とエコ・テスト出版の『エコ・テスト』の2誌が人気で、それぞれ数十万部を発行している。社会的な影響力もあり、2誌のテスト結果を受け、事業者が製品を改善したり百貨店が評価の低い商品を販売リストから外したりすることもあるという。
 同じ商品でも2誌で結果が異なることも多い。国民生活センターの『海外ニュース(平成25年7月)』によると、ヘアカラー剤の染まり具合や使い勝手の比較テストで、『テスト』は全てを合格、『エコ・テスト』は有害化学物質を多用していることを理由に全てを不合格とした。検出された化学物質は同じでも、何を有害化学物質と考えるかのスタンスの違いで結果が異なったようだ。

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