生態系や稲作への悪影響が懸念される特定外来生物の水草が、兵庫県洲本市五色町都志米山の 本田 池で確認された。「地球上で最悪の侵略的植物」と言われるほど繁殖力が強い「ナガエツルノゲイトウ」。周辺にも拡大しつつあり、住民らが駆除に乗り出した。専門家は「被害を防ぐには初動が重要。行政も連携して対応すべきだ」と警鐘を鳴らす。(山口博康)
池を管理する住民組織「米山 逆池 田主 」によると、県職員が現地を昨秋に視察した際、繁殖に気づき、岡本賢三代表(59)が環境省などに確認した。数年前に池に入ったとみられる。
河川やため池の保全に努める市民グループ「兵庫・水辺ネットワーク」(神戸市)によると、塩分や乾燥にも強く、わずかな茎や根からも増殖。広がると在来植物の成長を阻害し、水田では稲の収穫量が落ちる。茎や葉が水路に詰まり、他の作物への被害や水害につながる恐れもあるという。
尼崎、伊丹両市や稲美町のほか、琵琶湖(滋賀県)や印旛沼(千葉県)など国内各地で確認され、ブラックバスなどの生息地で見られることが多いため、釣り人が媒介している可能性が指摘されている。
本田池では今、水面の約6割を覆うが、完全な除去は難しく、運搬の過程で拡散する危険性もある。このため、光合成を妨げて枯死させる駆除法を選択。11日に住民らと排水口付近の約100平方メートルを遮光シートで覆い、池の外へ流出しないよう周辺を網で囲った。
11月に効果を確認し、成功していれば、隣接する範囲にシートを移していく。約1500平方メートルある池で全て終えるには、10年以上かかる見込みだという。
既に近くの水路や下流の池でも繁殖が確認され、対策が急がれるが、「一つの地域の力ではどうしようもない」と岡本代表。今後、他のため池管理団体とも危機感を共有し、勉強会などを企画していく考えだ。
兵庫・水辺ネットワーク事務局の大嶋範行さん(69)によると、米国では州ごとに警告が出されるほど深刻な事態に陥っているといい、「淡路島全体の問題として行政も動き、一気に封じ込める必要がある。対応が遅れるほど駆除は困難になり、労力も費用もかかる」と訴えている。
無許可での移動は違法
ナガエツルノゲイトウは特定外来生物に指定されており、許可なく植えたり移動させたりすると、外来生物法違反となる。個人は懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金、法人だと1億円以下の罰金が科される。駆除作業後は服や靴、道具、車両のタイヤなどに茎や根が付着していないか確認する必要がある。
◆ナガエツルノゲイトウ=南米原産の多年草。1980年代に県内で発見され、国内初の確認事例となり、その後に各地で拡大した。茎は空洞で水に浮き、流れ着いた先で繁殖する。陸地や海浜でも育ち、引き抜いても、土中深くまで伸びる主根がわずかでも残ると再生する。