昨年の沖縄県知事選挙では「辺野古移設反対」を掲げる翁長雄志氏が勝ったが、彼は仲井真前知事が移設容認と引き替えに獲得した8年間で2.4兆円の補助金 をよこせと政府に求めている。この論理は本土の人にはわからないだろうが、本書はそういう沖縄の屈折した利権構造を暴き出す。
「沖縄は戦争で犠牲になり、その後も基地の負担が集中してかわいそうだ」というのがマスコミの流すイメージだが、実際には米軍が土地を返還しようとすると反対運動が起こる。地元に賃貸料と補助金がおりなくなるからだ。
もともと辺野古移設は米軍の方針ではなく、1996年に橋本内閣が要望して実現した基地の縮小計画だ。これは基地反対の地元にとってはいいはずなのに、彼 らはいろいろな理由をつけて20年近く引き延ばしてきた。すでに「北部振興費」として2000億円以上が辺野古の地元に前払いされ、引き延ばせば毎年、数 百億円が地元に落ちるからだ。
といっても「補助金がほしいから移設を延期しろ」とは言えないので、地元の革新勢力は基地反対を叫び、保守陣営がそれを抑える見返りに本土から補助金を取 る――という茶番劇が続いてきた。しかし革新が弱体化して芝居が続けられなくなったので、仲井真氏は「有史以来」の補助金と引き替えに、辺野古移設を認め た。
これに怒ったのが、地元の土建業者などの支配層だ。辺野古移設を認めると補助金を取るためのカードがなくなってしまうので、保守の翁長氏が革新陣営と相乗りし、仲井真氏の政府との約束を破ることを公約に掲げて選挙に勝ったわけだ。
ほとんどマンガ的ともいうべき戦後左翼の末期症状だが、補助金漬けの沖縄経済は衰退の一途をたどっている。補助金は県庁や土建業界を中心とする支配階級に集中するので、一般県民との格差は拡大し、沖縄の県民所得は全国最低だが所得格差は日本一だ。
反戦・平和を掲げる地元紙は、この茶番劇を盛り上げて補助金を引き出す体制の一環だ。こういう実情は本土のマスコミも知っているが、ネタの尽きた平和運動のシンボルとして沖縄を食い物にしている。それに乗せられるのが、大江健三郎氏などの無知な文化人だ。
沖縄が自滅するのは彼らの自由だが、これ以上むだな税金をつぎ込むのはやめるべきだ。本書も指摘するように、沖縄の海兵隊は長期的には縮小・撤退の方向であり、今から新しい基地を建設する必要はない。辺野古がいやなら普天間を使い続ければいいのだ。