厳しい就職活動を経て会社に入ったのに、そこがいわゆる「ブラック企業」だったり、組織としてしっかりしていない会社だったりしたらとても残念。もし、運悪くそんな会社に入社してしまっても素早く次の行動を起こすために、しっかりと組織を見極める力を身に付けたいもの。一体どのような組織が危ないのか、その危険な兆候は見つけられるのだろうか。
危ない組織の特徴について、ガバナンス(組織統治)という見地から紐解こうと、『こうして組織は腐敗する 日本一やさしいガバナンス入門書』(中公新書クラレ)や『お寺の経済学』(ちくま文庫)など、組織や経済に関する著書も多く手掛けている慶応義塾大学商学部教授の中島隆信先生に、お話を伺った。
「競争意識のない業種、企業は世の中の変化についていけずにつぶれてしまうことが多いです。例えば、いわゆる町のとんかつ屋さんやすし屋さんはとんかつチェーン店や回転寿司に押されてつぶれてしまった店が多いですよね。ずっと競争やほかとの差別化をせずにやってきて、世の中の変化に対応できなかったんです。逆にラーメン屋さんは、ほかの店と価格競争をするのではなく、味を差別化することで、どんどん発展していきましたよね。」
中島先生は世の中の変化に対応するために、改革が必要になったとき、その改革の足かせとなる特徴も指摘する。
「現場の力が強いと、改革が進まない場合が多いですね。現場には仕事のノウハウや情報がたまりやすく、うまくいっているときはいいのですが、何かを改革しなければならないときに現場が抵抗しがちなんですよ。そういった場合に備えて、経営者が現場の状況を把握して、『現場を知らないじゃないか!』と下の人間に思わせないように『理論武装』することが大切。これができていない企業は怪しいですね」
さらに腐敗する組織は、責任の所在がおろそかにされている場合が多いそう。例えば、パワーポイントなどで緻密な資料を作り込んで、その資料を作った時点で『仕事が終わった』、『何かを達成した』気になっている人が多い組織は危ない。絵に描いた餅を作ることで満足し、その後、責任を取らなければならない時にはすでに部署移動していて、誰に責任があるのか分からない……。なんていうことが、腐敗体質の企業には多いのだとか。
また、中島先生が指摘する危ない企業の特徴として、『理念が抽象的』ということも挙げられるそうだ。
「企業はあくまでも、きっちり利益を出すことが前提。しかし、理念だけが先行し、ヒューマニスティックな理念があるから利益を犠牲にしてもいいというような考えに陥ってしまう企業が危ないですね。例えば『笑顔』『触れ合い』『元気』『生き生き』『根性』『夢』といった、受け取る人によってどうとでも解釈できる抽象的な理念を押しつけてくる組織。これでは、組織としての在り方を現場に丸投げしているようなものです」
まとめると、腐敗しやすい組織の特徴としては、
・競争にさらされていない
・現場が強い
・パワーポイントの資料作りにこだわる
・利益よりも抽象的な理念を大事にしがち
といったポイントが挙げられるようだ。あなたの周りの組織は大丈夫だろうか?