「大阪の逆襲」が始まった!世界ランキング上位を総ナメにする理由

新型コロナウイルス対策で、吉村知事による独自の施策で感染拡大を抑え多数の評価を得た大阪。さらに、2025年の万博に向けてこれからイベントや開発が目白押しの大阪周辺ではいま、ビジネスチャンスとしての注目度も高まっています。いま関西周辺で何が起きているのか。そこで今回は、日本総合研究所マクロ経済研究センター所長の石川智久氏の『大阪の逆襲』(青春出版社)から、万博に向けて進化し続けている昨今の大阪周辺事情について解説します。

なぜ今、大阪が世界ランキング上位を総ナメにしているのか

 東京一極集中が言われて久しいものがあります。もちろん、新型コロナウイルスの影響を関西も受けています。しかしながら、関西の最近の明るい話や実力を踏まえれば、これは克服可能であり、一時的に落ち込んだとしても、十分に復活できると思っている関西人は多いです。

 では、その関西の魅力とは?いろいろな角度から見てみましょう。米国総合不動産サービスのJLL(ジョーンズ ラング ラサール)が、2019年4月に発表した「都市活力ランキング」によると、ホテルやオフィスなどの商業用不動産のカテゴリーの勢いにおいて、大阪は世界131都市中、堂々の1位にランキングされました。

 大阪の底堅いオフィス需要や2025年大阪・関西万博開催決定によるインフラ整備、再開発の増加に対する世界の期待が大きいと言えます。

 不動産業界のプロが、当面有望な不動産市場は中国でもインドでもアフリカでもなく、大阪が世界トップと言っているのです。もちろん翌年の順位は変わるかもしれませんが、一度でも世界のトップに立てたというのは、非常に価値のあることではないでしょうか。

 銀行や不動産業界の方に聞くと、世界中の不動産ファンドから「関西で不動産投資をしたいのだが、いい土地はないか」と相談されることが増えているようです。

 また、米国の大手旅行雑誌「コンデ・ナスト・トラベラー」が、毎年秋に発表する読者投票ランキングがあり、2019年度は「世界で最も魅力的な大都市ランキング」で、1位に東京、2位に京都、5位に大阪が入りました。日本の3都市が同時にベスト10に入るのは初めてです。特に、大阪が前年の12位から大きく順位を上げていることは、注目に値します(東京・京都は前年と同順位)。

 評価のポイントは、京都が「深く息づく伝統の中に新たな文化が生まれている点」、大阪が「その土地ならではの食の魅力や熱狂的な野球文化」となっています。それぞれ魅力や特徴がとても明確です。

 さらに、英「エコノミスト」誌の調査部門がまとめた、世界主要140都市を5つの基準で評価する「世界で最も住みやすい都市」2019年度ランキングでは、4位に大阪が入り、一方で東京は7位と、東京を上回る評価を得ています。

「お笑い」「食い倒れ」だけじゃない大阪の現在

 関西以外に住んでいる方は、関西と聞くと「お笑い」「食い倒れ」といったイメージが先行している方が多いかもしれません。しかし実は、関西には「知の拠点」と呼ぶに相応しいほど、非常に多くの最先端の科学技術基盤が集積しています。

 京都大学、大阪大学をはじめ、関西には数多くの大学があり、人口千人あたりの学生数は関西が全国一です。兵庫県には、1秒間に100京回の計算を行えるスーパーコンピュータ「富岳」が設置される理化学研究所や、世界最高性能の放射光を利用できる大型実験施設「SPring-8」、国内初のX線自由電子レーザー施設「SACLA」など、日本の中でもきわめて希少な施設があります。

 また、大阪・京都・奈良にまたがる「けいはんな学研都市」には、3D映像で有名なNICT(情報通信研究機構)、多言語テキスト翻訳システムのATR(国際電気通信基礎技術研究所)など、キラッと光る個性を持った研究機関が多く立地しています。これらの施設が大阪を中心におよそ半径100㎞圏内にぎゅっと集まり、最先端設備とトップクラスの科学者が集結する関西は、世界でも屈指の先進科学技術エリアなのです。

 そういう意味では、関西で万博が開催されることは、必然と言えるかもしれません。関西の恵まれた環境を活かして、いまこの瞬間も多くのイノベーションの卵が次々に産み落とされています。

 これまでも多くの卵が大きく育って関西から世界へ発信され、海外諸国から賞賛を浴びてきました。そしていま、これまで私たちが見たこともない「イノベーションたち」の卵や、現在すくすくと育っている「イノベーションたち」がまだまだ無数に控えており、2025年大阪・関西万博で華々しくデビューしようとしています。そう考えると、何だかワクワクしてきませんか?

25年万博開催・IR誘致に向けて関西の勢いは止まらない

 今回の2025年大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」。関西は、そのテーマを実現するための「実験場」と位置づけられ、開催前から様々な企業・研究機関が先端技術の実証実験を、万博期間中にも実験的な展示を行います。

 特に万博会場である夢洲は、ほぼ更地で土地利用の制約が小さく、「未来社会の実験場」という2025年大阪・関西万博のコンセプトには最適な場所であると言えるでしょう。

 では、今回の大阪・関西万博ではどのような実験が行われるのでしょうか。具体的な内容は、2025年日本国際博覧会協会が有識者による議論を重ねているところですが、既に2019年6月の段階で大阪商工会議所が一定のアイデアを打ち出しています。その内容は、健康・医療分野では健康メニューが提供される健康レストラン、VR・ロボットによる健康増進プログラムを体験できるスポーツクラブなど。

 足元でもより具体的な動きが出てきています。たとえば水素を動力源とするドローン。エアロジーラボ社は、プロペラを複数備えた軽自動車程度の大きさの機体を想定し、2024年はじめには人を乗せた状態での飛行試験を行う計画です。

 また、大阪メトロと大阪シティバスは、自動運転で走る路線バスの実用化に向けて動き出しており、実証実験を経て2020年度に4路線で導入、大阪・関西万博では会場と駅との移動手段として活用する予定です。自動運転車を充電するためのワイヤレス充電システムについても、既にダイヘン社が大阪城公園などでの実証実験を重ねており、万博会場を移動する無人バスへの採用を目指しているほか、道路を走ったまま充電するシステムにいても開発を加速させています。

 今回の万博は、実は、万博の歴史を塗り替えると言われています。2025年の万博は、開催前から世界中の課題やソリューションを共有できる「オンラインプラットフォーム」を立ち上げる予定です。つまり、ネットとリアルを通じた来場者数は80億人を目指しているのです。大変スケールの大きい話だと思いませんか。

 また、夢洲が空き地ということは、今はだれも住んでいないということです。これは、仮に24時間万博をしてもクレームをつける人がいないということです。さらに、夢洲はカジノ付きリゾートであるIRの誘致予定地にもなっています。IRは基本的に24時間営業であることを考えると、夢洲は決して眠らない町にもなりえるでしょう。

 こうした事例は数え上げるとキリがないほどで、5年後、そしてその先の未来に向けて大いなる盛り上がりを見せています。2025年、大阪・関西は未来を体験できるショールームになろうとしているのです。

 このように、いま関西は万博開催・IR誘致に向けて熱気が高まってきています。例えば、万博やIRのセミーは連日満員ですし、私もメンバーの一員である「夢洲新産業創造研究会」という業種を超えた勉強会には、100社を超す企業がすでに入会しています。それほど、関西でのビジネスチャンスを見出そうと注目している人が増えてきているということです。2025年に向けて、そういった会合はますます増えてくるでしょう。あなたの未来を創る場として、ぜひ「大阪・関西」を候補としてみてはいかがでしょうか。

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