大阪府で2日、4度目の緊急事態宣言期間が始まった。
さらなる感染拡大を抑えるために一人一人の行動の見直しが求められるが、「宣言慣れ」も危惧されている。多くの人が行き交うJR大阪駅(大阪市)周辺で、初日の街の姿を見た。(松田祐哉、清家俊生)
府は不要不急の外出自粛を呼びかけ、企業に対しては、在宅勤務などを活用して出勤者を7割減らすことを要請している。
しかし、NTTドコモの「モバイル空間統計」によると、2日午後3時の駅周辺の人出は1週間前と比べ、6・6%減にとどまった。人の流れはこれまでと大きく変わらず、街には夏を楽しむ人たちの姿があった。
「久々におばあちゃんの顔を見られてよかった」。駅前を歩いていた岡山県倉敷市の女子高校生(17)は笑顔を見せた。1泊2日で大阪市内の祖母宅で過ごし、家に帰る途中だ。
昨夏は宣言下ではなかったが、全国知事会は「オンライン帰省」を呼びかけた。同会は今夏も、都道府県を越える移動を避けるよう求めている。
女子高校生は、昨夏は高齢の祖母に感染させるのが心配で帰省を見送った。「今日から宣言が出るのは知っていたけど、せっかく予定したので。やっぱり顔を見て話すのはいいですね」
駅周辺には、大型の映画館が並ぶ。夏休みシーズンで、人気アニメ作品が複数上映されており、若者や親子連れの来場が目立った。
昨年4月の最初の宣言では、府は映画館に休業を要請。その後の宣言時も規模によって休業や営業時間の短縮を求めた。今回は規模にかかわらず午後9時までの時短と、収容率50%以内での営業を要請している。
友達と訪れた男子高校生(16)は「コロナにも慣れたので全然気にならない。ワクチンも1回打ったし、大丈夫だと思う」と話した。
多くの百貨店が集まり、普段から買い物客でにぎわっている。この日も変わらない光景があった。
今春の3度目の宣言時は、百貨店は食料品や生活必需品の売り場を除いて、休業を要請されていた。今回は午後8時までの時短営業が求められている。
従業員にクラスター(感染集団)が発生し、1日まで全館閉館していた阪神百貨店梅田本店もこの日、一部で営業を再開。買い物に訪れた神戸市灘区の黒田絵美さん(33)は「経済を回すためにも百貨店は開けていてほしい」と話した。
駅のすぐ北側の「うめきた広場」。帰宅時間と重なる午後6時頃から大階段や広場に人が集まり始めた。日が落ちると一気に増え、約150人を数えた。
宣言で飲食店での酒類提供は停止され、出さない店も午後8時までの時短営業となる。
広場で酒盛りをしていた男性4人組は、会社の同僚で、仕事終わりに集まったという。20歳代の男性は、こううそぶいた。「コロナは怖いし、飲むことに罪悪感がないわけではないが、ビビったら負け。居酒屋で飲むより『密』にならないし、周りでみんな飲んでいるので、目立たない」
筑波大の原田隆之教授(臨床心理学)の話「最初の緊急事態宣言の時は、未知のことで多くの人が身構えたが、今は同じ刺激に慣れる『順化』状態となっている。メッセージだけでは、危機感を共有することはできず、人の流れも大きくは変わらない。宣言の効果を上げるためには、高速道路や電車の料金を上げるなど行動を物理的に制限する段階にきている」