「家を買うのは無理」2団体、仙台市に要望書

 仙台市が東部沿岸地域を災害危険区域に指定し、集団移転を促す方針を示していることについて、地元の2団体が10日、現地再建を求めて要望書や陳情書を市に提出した。大津波に襲われた東日本大震災から8カ月。時間の経過とともに、住み慣れた土地への愛着と、一向に見えない費用負担の重圧が増しているようだ。
 ほぼ全域が危険区域候補地となった若林区荒浜地区の「荒浜に住み続けることを希望する住民有志」は、代表の二瓶寿浩さん(44)ら15人が市役所を訪れた。
 二瓶さんらは「荒浜に戻る道が絶たれ、到底容認できない」「家と土地を新たに買うのは経済的に無理」と主張。区域指定に必要な条例改正案の早期提出を見送り、妥当性や必要性を再検討した上で、説明の場を設けるよう求めた。
 奥山恵美子市長は「意見交換していくのは大事なことで、住民の意向を無視して進めようとは思っていない。要望を踏まえ、今後の進め方を相談したい」と述べた。
 宮城野区の七北田川と仙台港の間に位置する和田町内会の住民による「蒲生和田地区の震災復興等を考える有志の会」は、千葉信さん(65)ら5人が市震災復興本部で現地に住み続ける意向を伝えた。
 近隣も含む約140世帯分の署名を添えた陳情書を提出。海側の道路かさ上げ、仙台港方面からの流水を抑える堤防設置、避難ビルの建設などを提案した。
 千葉さんは「地区には倒壊や流失を免れた家屋が多い。多重防御を施せば住める」と指摘。市は「現時点で指定区域を変える要素はないが、今後も検討作業は続けていく」と答えた。
 荒浜、和田両地区内には集団移転か現地再建かをめぐり、さまざまな意見が交錯している。2団体は、危険区域を外れても防災集団移転促進事業の対象とし、移住したい住民に配慮するよう求めている。

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