「尖閣は日本が盗んだ」中国の“噴飯”国際世論工作

10月1日、中国は71回目の国慶節(建国記念日)を迎え、14億人が8連休の初日に沸いた。この日は、中秋の名月である「中秋節」(旧盆)とも重なり、「双節」(二つの祝日)と持て囃された。

 ところがこの日、海を挟んだ日本側では、中国側の「祝賀ムード」に水を差す動きがあった。尖閣諸島を含んでいる「日本最南端の自然文化都市」沖縄県石垣市が、市のホームページで、「尖閣諸島字名変更に伴う郵便番号の設定について」と題した発表を行ったのだ。

 それによると、「日本郵便株式会社八重山郵便局から郵便番号設定のお知らせがありました」という。そして石垣市は、尖閣諸島の新しい郵便番号「〒907-0031」をお披露目したのだった。

地名に「尖閣」を明記

 これは6月22日に、中山義隆石垣市長が、市のホームページで発表した下記の通知に呼応したものだった。

<本日、石垣市議会本会議において、尖閣諸島の字名変更の議案が可決されました。これは、以前より石垣市字登野城2390番地から2394番地までの字名地番がついていた尖閣諸島を、石垣島に所在する字登野城と区別するために、尖閣諸島の字名を「字登野城」から「字登野城尖閣」に変更するもので、地方自治体の行政手続きの一つです>

 要は、住所の地名に「尖閣」と明記することで、尖閣諸島が沖縄県石垣市に属していることを明確化しようとしたわけだ。

 国会でも、9月17日に自民党国防議員連盟が、「尖閣諸島の更なる有効支配強化のための提言(骨子案)」を作成している。

 それは、第一に「防衛力の強化」として、(1)国民保護計画の作成及び自衛隊との訓練、(2)南西諸島での警戒監視・防空能力強化、(3)南西諸島への本土等からの展開能力向上、(4)南西諸島の空港・港湾の整備、(5)南西諸島における兵站能力の向上、(6)自衛隊単独及び日米共同での島嶼防衛訓練強化と訓練場整備、(7)島嶼防衛用の新装備の研究開発促進、(8)台湾防衛当局との意思疎通を謳っている。

 第二に、「警察力の強化」として、(1)海上保安庁の体制強化、(2)沖縄県警の尖閣警備体制の強化、(3)水産庁の官船及び用船の増強・体制強化、(4)海上保安庁及び沖縄県警と自衛隊との連携強化、(5)出入国在留管理庁と海上保安庁および警察との連携強化、(6)海上保安庁と米国コーストガードの共同訓練、(7)日中漁業共同委員会による暫定水域等の漁獲量の確定、(7)沖縄漁業基金の拡充を謳っている。

 第三に、「行政力の強化」として、(1)施設・設備の整備、(2)尖閣諸島周辺の漁業支援、(3)尖閣諸島戦時遭難事件の遺骨収集及び慰霊祭の支援、(4)海洋・環境調査の実施、(5)石垣市に領土・主権展示館の出先機関の設置等、(6)久場島での固定資産税に係る実地調査、(7)東京都尖閣諸島寄贈による尖閣諸島活用基金の活用を謳っている。

 要は、中国に遠慮することなく、日本の持てる力を総動員して尖閣諸島を防衛していこうということだ。

中国が開設した「釣魚島博物館」

 そんな日本に対して、中国側も10月3日になって、思わぬ「反撃」に出た。「中国釣魚島数字博物館」なる博物館をオープンさせたのだ。「釣魚島」(ディアオユィダオ)とは、尖閣諸島の中国名である。

 一体どこに? それは、インターネット上である。中国でも珍しい「ネット博物館」なのだ。

 早速、この博物館に「入場」してみると、これも中国では珍しいことに、説明言語を8カ国語の中から選択できるようになっていた。中国語・英語・日本語・フランス語・ドイツ語・ロシア語・スペイン語・アラビア語である。この「気合い」から、世界中に中国の主張を流布していきたいという意図が読み取れる。

 せっかくなので、日本語の説明を選択してみた。すると、尖閣諸島の写真とともに、「釣魚島――中国固有の領土」と書かれた画面が表れた。そして「自然環境」「歴史的根拠」「文献資料」「法律文書」「学者の論著」「最新情報」「映像資料」の各コーナーに分かれて、詳細な「展示」がされていた。以下、簡単に内容をお伝えしよう。

「尖閣は日本が盗んだ」中国が開始した国際世論工作

「自然環境」・・・1番目の「釣魚島」から、71番目の「飛仔島」まで、71個の島の中国語の名称とピンイン(英語表記)、位置までがご丁寧に羅列してある。例えば、「釣魚島」の位置は、「温州市から約356キロメートル、福州市から約385キロメートル、基隆市から約190キロメートルの所に位置する」と書かれている。

「歴史的根拠」・・・「釣魚島の主権が中国に属する歴史的根拠」として、「1 中国が最も早く釣魚島を発見、命名且つ利用した」「2 中国は釣魚島を長期に亘って管轄してきた」「3 中国と外国の地図において釣魚島が中国に属すると示されている」として、それぞれ詳細な解説が記されている。

「文献資料」・・・明朝初期の1403年に成書された『順風相送』から、1895年に日本で出版された『沖縄県管内全図』まで、計23の文献や地図などの尖閣諸島の表記が示されている。

「法律文書」・・・「法律条令並びに政府の文書」として、「領海に関する中華人民共和国政府声明」(1958年9月4日)から「釣魚島は中国固有の領土である」(白書 2012年9月)まで、7つの文書が並ぶ。その下側には、「馬関条約」「カイロ宣言」「ポツダム宣言」「日本降伏文書」まで並んでいる。

「学者の論著」・・・「中国及び外国の著書」として「鞠德源著『日本国の土地窃取の源流 釣魚列嶼における主権辯』(首都師範大学出版社 2001年5月第1版)以下6点。「論文」として、「呂一燃『歴史資料による証明:釣魚島列島の主権は中国に属する』(『抗日戦争研究』1996年第6期)以下4点。「新聞記事」として、「鐘厳『釣魚島の主権帰属を論ずる』(『人民日報』1996年10月18日)以下4点が掲載されている。『ファーウェイと米中5G戦争』(近藤大介著、講談社+α新書) © JBpress 提供 『ファーウェイと米中5G戦争』(近藤大介著、講談社+α新書)

「最新資料」・・・「中国海警局の公船が2014年1月27日に、中国の釣魚島領海内を巡航」から、「中国海警局の公船が2018年6月25日に、中国の釣魚島領海内を巡航」まで、計139回の巡航記録の詳細が明記されている。

「映像資料」・・・「中国国家海洋局:2013年、中国海監の公船が釣魚島領海で50回の巡航を行った」という『東方衛視』(2014年1月17日)のニュースから、「中国海警局の公船が今日釣魚島領海内を巡航した」という『中国中央広播電視総台』(2014年12月23日)のニュースまで、計6本の映像が見られる。

 以上である。ネット上の「なんちゃって博物館」ではなく、まさに「国家の威信を賭けた博物館」なのである。

 尖閣諸島はこれから寒い季節を迎えるが、日中の「場外戦」はホットになる一方だ。

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