「就活メーク」で目指す内定 面接で好印象

 超氷河期といわれる厳しい就職戦線のただ中にいる女子学生たちが、採用面接で優位に立つために「就活メーク」と呼ばれる好感度の高い化粧法を身に付けようと躍起になっている。大学などが開く手取り足取りのメーク講座が、就活の新しい風物詩になりつつある。
 ◆「カリスマ」が指導
 1月中旬、東京の跡見学園女子大学。「アイメークは濃過ぎないように。お父さんくらいの年代の面接官に好感を持ってもらえるようにしましょう」。資生堂のカリスマ・メーキャップアーティスト西島悦さんのメーク講座に、約200人の学生が聞き入った。
 西島さんによると、就活メークとは、自らの知性、感性、意欲を引き出す「私が輝いて見える化粧」。今風の、目元の印象が強過ぎたり頬紅が濃過ぎるメークは禁物だ。
 舞台の上でモデルを務めた3年生の成尾由衣さん(21)。これまで付けまつげをしてアイラインをくっきり引いていたが、清らかな印象に変身した自分を鏡で見て「これで自信をもって面接に臨めそう」とほほ笑んだ。
 資生堂に大学からの講座依頼が増えたのは2008年のリーマン・ショックのころからで、10年度は前年度比3割増。「第一印象で見劣りしないように」(島根大)などと地方の国立大学でも講座が増えている。
 花王は、リクルート社主催の各地の企業合同説明会にメークコーナーを設置。東京や大阪ではプロの助言を求める女子学生が2時間待ちの列をつくり、札幌では体験講座の予約がすぐに満杯になった。
 ◆内面が外見に反映
 札幌の会場に来ていた小川文央さん(20)は「業種によって許される化粧が違うと聞いた」と困惑気味。後藤千凡さん(20)は「薄過ぎても駄目と言われるので難しい」と悩む。跡見学園女子大学の吉村英子教授は「雇用情勢が厳しく、少しでも面接を有利に運びたいという学生の意識は強くなっている」と指摘。講座人気には、錯綜する情報の正解を欲しがり不安を拭い去りたい学生の焦りが表れているようだ。
 「今の学生にとってメークは自己表現の手段。仲間同士、同じような濃い化粧をすることで、つながりを確認してきた」と話すのは、化粧文化に詳しい甲南女子大学の米澤泉講師。一方で全く化粧をしない子が増えたのもこの世代の特徴だ。片や自己流、片やノーメーク。「いずれも化粧は身だしなみだという意識が薄く、面接を前に加減が分からない」と花王の佐野扶美枝ブランドマネジャー。
 狭き門の内定を求め、化粧法一つにまでビクビクする女子学生。だが大手メーカーの人事課長は「外見は選考の大きな要素ではない」と断言する。「人は見た目が9割」の著者で演出家の竹内一郎さんは「私が言う外見とは、目の動きや表情、身ぶりなどを含めた言語以外の表現のこと。内面が見た目に表れることを忘れてはいけない」と女子学生たちに助言した。

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