「山コン」カップル次々 南阿蘇熱く「復興の起爆剤に」

熊本県南阿蘇村の南外輪山を舞台に独身男女が交際相手を探す「山コン」が人気だ。登山ブームも後押しし、初開催の昨年は定員80人に5倍、今年も熊本地震の影響が心配されながら3倍の応募があった。昨年は2組がゴールインし、数多い婚活イベントの中でも実績は上々。主催する村は「復興の起爆剤に」と意気込む。大自然に身を置くことで異性の素顔が見えるのかも…。同行して魅力を探った。

365歩の復興マーチ 熊本県がWebムービー

大自然 異性の心も解きほぐす

 3日午前8時半。南阿蘇村の道の駅「あそ望の郷くぎの」に、ウインドブレーカーと登山靴の男女40人ずつが集まった。準備運動を済ませ、男女別々にバスに乗って登山口の地蔵峠へ。

男性陣のバスには、これまで500組以上のカップルを成立させた婚活コーディネーターで地元タレントの荒木直美さん(48)が乗り込んだ。「見た目じゃなく中身を探って」とアドバイス。車窓には大パノラマが広がるが「景色じゃなくて今日は女の子を見てね」とハッパを掛ける。

登山道に入ると男女が並んで歩く。「葉が色づいてますね」「背中に虫がいますよ」。景色がどんどん変わり、会話も弾むようだ。「大自然が心を開かせるということでしょうか」と村の担当者。

昼食を含めた自由時間、まごまごする参加者に「もっと積極的に」「そこ、女子会は禁止」と荒木さんの指示が飛び、そのたびに場は和む。下山後は道の駅に戻り、歓談を楽しんだ。

第2希望まで好みの異性の名前を書き、合致した10組がカップルに。熊本県人吉市の男性(27)は「合コンや街コンは酒に酔って話しやすいけど、素の姿で交流できたのが良かった」と晴れやか。

この日、昨年の山コンで出会って愛を育んだカップル2組が結婚の報告にやってきた。大分市の久永大悟さん(31)と南阿蘇村出身の暖さん(31)夫妻は挙式後、晴れ着姿で駆け付け、イベントを盛り上げた。

村企画観光課の後藤忠勝課長は「南阿蘇の自然の中で出会いを見つけ、いずれは定住してほしい」と来春の開催も検討中だ。

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昨年は参加した男女40人ずつのうち、2組が結婚した。この実績について、婚活事情に詳しく「未婚当然時代」の近著がある作家、にらさわあきこさんは「他の婚活イベントと比べて成功率は高い」と評価。「山という場所は、異性の魅力が伝わりやすいのではないか。時間をかけて相手を見られることが結果につながっている」と分析する。

婚活は、実名登録が原則の会員制交流サイト(SNS)を活用して「出会い」を求めるタイプが流行している一方で、料理やスポーツ観戦などを通して交流するタイプが成果を上げやすいという。

九州でも地域の観光地を巡る自治体主催の婚活イベントが盛んになっている。にらさわさんは「婚活は見た目や条件で選別する時代から、一緒に長くいられる相手を見定める時代にシフトしている。おせっかい役を入れるのも大事で、主催者には時間のかけ方と男女をくっつける工夫が求められる」と話している。

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