18府県33件の祭りで構成される「山・鉾(ほこ)・屋台行事」が1日未明、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決まった。東北分は青森、秋田、山形3県の5件。正式決定の吉報を受け、それぞれの地元では同日、祝賀ムードが広がった。
◎地元の特色世界発信/青森・八戸三社大祭(八戸市)
八戸三社大祭は豪華な山車27台などが練り歩く、八戸市を代表する祭りの一つ。市役所ロビーには午前10時から祭り関係者や市幹部ら約100人が集まり、くす玉を割って祝った。八戸三社大祭山車祭り行事保存会の小笠原修会長は「三社大祭を世界が注目する新たなステージに入った」と喜んだ。
新井田地区の運行団体会長を務める岩本雅則さん(60)は「うれしさの一方で責任の重さを感じる。山車の題材にえんぶりなど地元の特色を取り込み、八戸を世界に発信したい」と意気込みを語った。
市は今月6~27日、市役所ロビーでパネル展を開催。約300年前の豊作祈願と報恩を起源とする大祭を紹介する。来年2月に祝賀会と講演会を開く予定。
三村申吾青森県知事は「県民にとって大変誇れる喜ばしいこと。ユネスコ登録の価値を引っさげ、国内外の誘客を進めていきたい」と述べた。
◎涙出るほどうれしい/秋田・角館祭り(仙北市)、土崎神明社祭(秋田市)、花輪祭(鹿角市)
東北で最も多い3件の登録が決まった秋田県では、地元自治体や祭典に携わる人々が喜びに沸き、未来へつなげる思いが膨らんだ。
秋田市の「土崎神明社祭の曳山(ひきやま)行事」の祭り関係者約40人は、同市土崎港中央3丁目の土崎神明社で連絡を待った。午前2時すぎに電話で一報が入ると、土崎神明社奉賛会の小林一彦会長(83)は「涙が出るほどうれしかった。決定は400年続く土崎地区の港衆の汗と団結の結晶だ」と喜びをかみしめた。
奉賛会一行は昼前、市役所を訪れて登録を祝う看板を除幕し、港ばやし保存会の会員5人が勇壮なおはやしを披露した。祭りは江戸中期に始まったとされ、戦国武将の人形飾りを載せた山車「曳山」が「ジョヤサ」の掛け声に合わせ練り歩く。
小林会長は「気を引き締め、宝物の伝統文化を正しく後世に伝えていきたい。祭りを通してまちづくり、人づくりにつなげる」と決意を語り、穂積志市長は「市も協力するので世界に打って出てほしい」と話した。
仙北市の「角館祭りのやま行事」は、同市角館町で350年以上続く。歌舞伎や武者の人形を載せた「曳山」が、通る順番を争ってぶつかり合う「やまぶっつけ」が有名だ。
角館のお祭り保存会の今野則夫会長(67)は「大変誇らしく思う。文化財として地域の伝統文化が継承、保存されるよう願っている」とコメントを出した。
「花輪祭の屋台行事」の登録が決まった鹿角市では児玉一市長が記者会見で「非常に喜ばしい。2009年に登録された大日堂舞楽と合わせ、二つの無形文化遺産を持つ貴重な地域になったので、魅力を積極的に発信していく」と述べた。
屋台行事は日本三大ばやしの一つ、花輪ばやしとして知られる。ちょうちんや金箔(きんぱく)で飾った10基の豪華な山車「屋台」が勇壮なはやしに合わせて運行される。
3件の登録決定に、佐竹敬久知事は「遺産登録を契機に、さらに地域の伝統や文化を守り受け継いでいくとともに、観光客誘致の拡大など地域活性化に向けた取り組みも進めていく」とコメントを出した。
◎市民の自信と誇りに/山形・新庄まつり(新庄市)
261年引き継いできた伝統の新庄まつりが評価された新庄市内では、記者会見や登録を祝う記念セレモニーがあった。
山尾順紀市長は午前、まつりの山車( やたい )が展示されている新庄ふるさと歴史センターで急きょ記者会見。「市民の自信と誇りにつながる。山車を展示解説する『飾り山車』の時間延長などいろいろな点で磨きをかけ、おもてなしをしたい」と笑顔を見せた。
「今までやってきたことが認められ、うれしい。今後の力にしたい」とは新庄山車連盟の木村満会長(59)。町内会ごとの山車作りは世代を超えたコミュニケーションの場になっており、地域の人づくりのため「大事にしなければいけない」とも話した。
午後6時からはセンターで記念セレモニーがあり、市民ら150人がくす玉割りや振る舞い酒で祝った。
吉村美栄子山形県知事は「大きな喜びであり、県内の無形文化遺産の保護・継承に取り組む全ての方々に誇りと希望を与えるものだ。観光振興や地域経済の活性化、郷土愛の醸成につなげていきたい」とのコメントを出した。