「岸田首相を呼びつけろ」旧統一教会・韓総裁の痛烈「日本批判」に透ける教団の「三重苦」を有田芳生氏が解説

「韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の発言が報じられて、驚きました。ほかの信者もびっくりしているのではないでしょうか。発言の全体を聞いているわけではありませんから、お話しされた内容の詳細はわかりませんが、正直、困惑しています。日本の状況が、総裁はわかっておられないのか……」

そう語るのは、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)のある信者だ。統一教会のトップである韓鶴子総裁が、6月28日に韓国内で、日本の幹部ら1200人に対して演説をおこなった内容が報じられた。

「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」

「日本の政治は滅ぶしかないだろう」

「岸田総理や日本の政治家を韓国に呼びつけて、教育を受けさせなさい」

現職首相の個人名まで取り上げ、痛烈に日本への怒りを表明した韓総裁。安倍晋三元首相の銃殺事件から間もなく1年のこの時期に、なぜこうした発言が飛び出したのか――。長年、旧統一教会の問題を追及してきた元参院議員でジャーナリストの有田芳生氏に分析を聞くと、資金繰りに困った教会の苦しい身の上が見えてきた。

「現在の旧統一教会は、いろいろな案件で揺れています。ひとつは、教団のナンバー2といわれ、韓総裁の腹心中の腹心とされてきた、世界宣教本部本部長のユン・ヨンホ氏が、教団の資金を着服していたとして最近、更迭されたのです。韓総裁には虚偽の報告をしていたようで、現在は本部長が不在になっているといいます。信頼していた部下に裏切られ、体制が揺らいでしまったことに、韓総裁は相当、イライラしていると言います。まずは3分でかんたんお見積

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また、日本からの献金をもとにして建設が進められている、韓国・清平(チョンピョン)の大規模な教団施設『天苑宮』の工事が進んでいないことも大きな懸念でしょう。2023年5月にオープンする予定で、総工費300億円ともいわれていました。ところが、日本からの献金がストップして、工事が進んでいないのです」(有田氏・以下同)

さらに、かねてから報じられてきた、韓総裁と三男・文顕進(ムン・ヒョンジン)氏の裁判の決着も、総裁にとっては大きな誤算となっているようだ。

旧統一教会関連団体『UCI』の理事長になっていた文氏だが、そこに活動資金として渡していた1400億円のうち、700億円ほどを、教団と関連のない団体に寄付していたなどとして、韓総裁は文氏を訴えていた。

「ところが、裁判で敗訴になり、総裁としては、返ってくると踏んでいた700億円の目算が外れてしまった形になっています」

有田氏は、旧統一教会本部が抱えるこの「三重苦」が、今回の異例の発言につながったとみている。

「教団として資金が必要な時期に、日本からの献金がストップしたままになっていることで、怒りが頂点に達したのでしょう。総裁は、日本の幹部信者に対して『とにかくお金を送れ』と言ってきました。日本側は、6月以降、送金しているといいますが、はたしてどれだけ送金できているかわかりません。

2022年の安倍晋三元首相銃撃事件から、旧統一教会への批判は相次いでいます。当然、献金を集めるどころではありませんよ。それでも韓総裁は、銃撃事件以降、『宗教弾圧と闘え』『裁判で訴えてもやれ』と命令してきました。

また、教団と関係があった自民党の議員は、厳しい批判を受けた2022年の段階で『教団とは関係を断った』と言わざるをえませんでした。なので、韓総裁の発言に対しては、いまはやり過ごすしかないと思っているでしょう。韓総裁としては踏んだり蹴ったりの状態で、怒りが爆発しての発言だったと思います」

安倍元首相銃撃事件から1年が経過しても、「とにかく金、金という教団の体質はまったく変わっていない」と有田氏は憤る。その矛先は、これからも日本に向き続けるのだろうか――。

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