「庚申講」14年ぶり復活 仙台・大倉 地区住民が夜通し宴会、家内安全願う

仙台市青葉区大倉の白木地区で、住民同士が一晩中ごちそうを食べながら家内安全などを願う習わし「庚申講(かのえさるこう)」が14年ぶりに復活した。ご神体の掛け軸に手を合わせた後に謡曲を口ずさみ、定番のなますやみそに舌鼓を打った。昼間の約2時間に短縮したが、参加者は「今度こそ伝統がなくならないよう続けたい」と意気込む。

 「四海(しかい)波静かにて 国も治まる時津風」。11月27日、地区の集会所に謡曲が響き渡った。声の主は住民ら18人。謡い終わると乾杯の音頭とともに宴会が始まり、前日から仕込んだ「七味南蛮味噌(みそ)」や「キノコなます」をさかなに杯を傾けた。

 壁に飾られた掛け軸は「定義さん」と親しまれる地元の西方寺から1734年に賜ったと伝えられる。

 庚申講は集落単位などで夜を徹して宴会をする全国的な風習。白木地区でも古くから受け継がれ、毎年11、12月ごろに行われてきた。3日間かかる行事を輪番で仕切る「宿」と呼ばれる家は大量の料理の準備で多忙を極めたという。

 なますなどに使う大根は100本必要で、キノコが生えない年には材料を用意するのも一苦労だった。作業する女性の負担が大きいこともあり、一部の集落で1988年に、残る集落でも2008年に途絶えた。

地域文化の継続に意欲

 22年に入り、別の行事で集まった住民の中から「また七味南蛮味噌やキノコなますを作りたい」という声が上がった。その後、市宮城西市民センターが大倉一帯の昔の暮らしをまとめた冊子を発行。庚申講が取り上げられて復活論に弾みが付き、古老の意見を聞きながら準備を進めた。「白木収穫感謝祭」と名付けて今回の復活に至った。

 白木町内会長の平武さん(78)は「庚申講は地域の文化なので、途絶えさせたくなかった。何とか継続していきたい」と話す。

 市民センターの冊子は好評のため全500部がなくなり、来年度に増補改訂版が発売される。一部700円。連絡先はセンター022(393)2829。

タイトルとURLをコピーしました