「心残りは税財政改革」御手洗経団連会長 退任会見

 御手洗冨士夫日本経団連会長は20日、27日の退任を控えた最後の記者会見で、「少子高齢化がすすむなか、いまのような財政危機を抱えて国際競争に打ち勝つのは不可能だ」と述べ、平成18年5月から2期4年にわたる任期を振り返り、「心残りは税財政改革」と話した。「政治と経済は車の両輪で、経団連は両者をつなぐ車軸」が持論の御手洗氏だが、宿題は次期会長の米倉弘昌氏に託されることになる。
 国民総生産(GDP)成長率が4期連続でプラスになるなど日本経済が回復に向かう中での降板に、御手洗会長は、「経団連は政策提言を通じてこれに寄与できたし、26カ国を訪問して民間外交でも成果を挙げることができた」と自己評価した。
 積極的な民間外交は御手洗会長の真骨頂だった。米国キヤノンでの23年間に及ぶ駐在時代に培った英語力で26カ国を訪問。G8ビジネスサミットに5度参加し、今年3月にはアジア11カ国に呼びかけ東京でアジアビジネスサミットも開催した。
 最後の会見でも、「中国とのパイプをさらに強化したい」と述べ、経団連会長の年2回の訪中の定例化に期待を寄せた。小泉純一郎首相(当時)時代に冷え込んだ日中関係改善の端緒を開いた自負がある。
 一方で、経団連会長として初めて政権交代に直面。民主党政権下で政治との距離は遠のくばかりだった。鳩山政権との政策対話を試みたが、首相官邸には一度も招かれていない。
 政治献金への関与を取りやめ、政策提言という手段で豊かな社会を実現しようと奮闘した御手洗会長は、「毎日が緊張の連続だった」というまじめな人柄。率直な発言でリーダーとしての資質を問われることもあったが、「やるだけのことをやりきった」と、その顔は晴れやかだった。
 ただ、「社会保障、税財政改革はどうしてもやらねばならない」と無念もにじませる。自民党政権下で短命内閣が続いたことや昨年の政権交代などで政局が不安定だった上に、高い成長が見込めない経済状況では、経済・社会の根幹にかかわる制度改革は困難だった。
 社会保障や税財政の一体改革、道州制など、就任の翌年に掲げた「希望の国、日本」と題した御手洗ビジョンも道半ば。民主党政権について「発足当初は距離を感じたが、いまの成長戦略の検討過程をみると経団連の方向と親和性がある」と、今後に期待感を示した。(早坂礼子)

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