仕事のモチベーションを高める方法のひとつとして、組織独自のスローガンやコピーを掲げるというものがあります。「挨拶を大事に!」「お客様は神様です!」といったフレーズは、それらのなかでも広く浸透した代表的なものでしょう。
また、ビジネス誌において企業の社長が以下のように発言するのを見たことがありませんか?
「弊社の社員は、単なる人材ではなく『人財』なんです! 社員は会社にとって財産なのです!」
「弊社が取り組んでいるのは『仕事』ではありません! 高い志を持ち、社会に自社のサービスを広めていきたいという『志事』をしているのです!」
そして、人間関係について道徳的教育を施す指導者のなかには、以下のような発言をする人もいますよね。
「親友よりもより深い関係になることを、私は『心友』と読んでいます。こうした関係になったとき、その2人は本当に心が通い合う友だち、そう『真友』ともなるのです!」
このように、ある単語の読みはそのままにして漢字だけを変える「当て字」によって、そこに独自の意味を込める人は少なくありません。こうした物言いは、メッセージを伝えたい相手に対してわかりやすく、かつ印象に残ることもあるでしょう。
ところが、こうした一部の指導的立場の人たちの態度に違和感を得る人もいるようです。以下の調査結果をご覧下さい。
【アンケート調査】
「志事」「人財」「心友」のように、単語に正しくない漢字(正しくは「仕事」「人材」「親友」)をあてて自己啓発や道徳を説くことをどう感じますか?
・不健全だと思う:47.2%
・特に何も思わない:52.8%
実に、ほぼ真っ二つでこうした物言いに対して不健全と感じる人がいるという結果になっています。
では、回答者はなぜこうした「当て字」を不健全と感じたのでしょうか? 寄せられたフリーアンサーから明らかになったその理由を、5種類に分けてご紹介します。
■1:ブラック企業のように感じる
「最近は、こうしたきれいな言葉で飾り立てて不当に労働力を搾取する企業がある」(20代・男性)
「こういうフワフワした言葉はブラック企業っぽい」(20代・男性)
「会社は社員のことを素朴に『人財』と言うが、これは会社側による一方的なあてつけである。自分は別に会社の所有物ではない」(50代・男性)
■2:新しい言葉をつくることにイラっ!
「自分が新しい言葉を発見したと思っている奴にイラッとする」(20代・男性)
「勝手に新たな単語を作らないで欲しい」(20代・男性)
「言葉は時代や社会のなかで変化したり新たに生み出されるものではあるが、あえて人為的に造った漢字に魅力なんてない」(20代・男性)
■3:「うまいこと」を言ったと思っていることにイラっ!
「『うまいこと言おう』という、本当に伝えたいこととは別の目的意識が働きすぎているきらいがあるから」(20代・男性)
「言っているほうは『うまいことを思いついた!』という感じで説いているのだろうけど、聞く側は『くっだらない』と思ってしまう」(30代・女性)
■4:ヤンキーっぽいことにイラッ!
「当て字は嫌い。ヤンキーじゃあるまいしと思う」(30代・女性)
「暴走族の当て字に等しいと思うから」(60代・男性)
「軽薄なポエムの一種で不快。しかしこれを好むヤンキーみたいな人は一定数いる」(30代・男性)
■5:漢字は正しく使ってほしい!
「漢字の成り立ちは歴史があり、それなりに重い。軽々しく当て字を使うべきでない」(60代・男性)
「子供のキラキラネームに通じるような気がします」(40代・女性)
「言葉の意味が全く違ってきますし、抽象的な意味合いが強くなる言葉遊びはやめたほうがいいと思ってます」(40代・男性)
「ブラック企業」という言葉を出して嫌悪感を示す人の声は特に多く、あらためて昨今の労働問題に対する世間の人々の厳しさがうかがえる結果となりました。
【調査概要】
方法:インターネットリサーチ「Qzoo」
調査期間:2014年8月15日(金)~8月19日(火)
対象:全国20代~60代 男女ユーザー計1500名
(文/しらべぇ編集部・高梁孝太郎)