「急いで銀行」のはずが湯を沸かす…パニック症候群

都内の中堅商社に今年入社したBクン(23)のあだ名は「不審君」。とにかく行動が不審、というより意味不明なのだ。コピーを頼まれるとファクスを操作するし、「急いで銀行に行ってきて!」と頼まれるとなぜか給湯室に行って大急ぎでお湯を沸かす…。大丈夫か? 大丈夫じゃないな。
 Bクンはとにかく落ち着きがない。急ぐ必要もないのにあたふたして失敗する。特に電話が苦手なようで、こちらから取引先に電話をした時に、「△△商会と申します」と言おうとして「△△商会と思います」と言ってしまい、先方に不審がられたこともある。おそらく先方の会社でも「不審君」とよばれていることだろう。
 人と接することの苦手な彼には、会社という組織自体に身を置くこと自体がストレスなのだ。
 「自律神経のうち、リラックスをつかさどる副交感神経が極度に低下しているため、落ち着いた行動がとれなくなっているのでしょう」と分析するのは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸医師。自分にとって緊張する場でしかない会社にいるだけで副交感神経が低下してしまい、自分で自分を制御できない状態に陥ってしまっているのだという。
 「早い話がパニック。でもこれは、副交感神経を活性化させれば治まります。自律神経のトレーニングで改善可能です」
 小林医師が勧めるトレーニングはきわめてシンプル。とにかくゆっくり動くこと-というものだ。
 「外科医の教育で『ゆっくり速く』という表現が使われます。緊張状態の人が急ぐのと意識してゆっくり行動するのを比較すると、ゆっくり動いたほうがトータルでは仕事が早く終わり、ミスもない。何気ない動作を意識してゆっくり行うことで呼吸が深くなり、副交感神経が活性化されて落ち着くんです。このトレーニングは、緊張やストレスに起因するあらゆる症状に効果があります」(小林医師)
 Bクンはいますぐこのトレーニングをすべきだが、「急いでやれ!」というとまたお湯を沸かしてしまいそうなので、ゆっくりでいいからね。 (長田昭二)

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