「愛子」「放出」「安足間」さまざまな難読駅 簡単なようで難しい駅も

国内の約9000か所にある鉄道駅の多くは漢字表記の駅名が付けられていますが、一部の駅は読み方が難しい「難読駅名」になっています。簡単なようで読むのが難しいものや、漢字自体が見慣れないものまでさまざま。実際にどのような難読駅があるのでしょうか。

愛子駅は「あいこ」ではなく…

鉄道の駅は多くの場合、その駅がある場所の地名を駅名として使っています。地名のほとんどは漢字表記のため、駅名も漢字表記になっていることがほとんどです。


仙山線の愛子駅。つい「あいこ」と読みたくなる(2015年7月、草町義和撮影/読みの部分にぼかしを入れています)。

ただ、日本の漢字はひとつの字に複数の読み方があるのが一般的。とくに地名は原則とは異なる読み方をする場合も多く、どう読めばいいのか分からない「難読駅名」も多数あります。

難読駅名は大きく分けると「一般的な読み方とは異なる」「複数ある読み方のうちどの読み方を選べばいいのか迷う」「見慣れない漢字の組み合わせ」「漢字自体が難しい」の4ケースがあるといえます。それぞれのケースでおもなものを見てみましょう。

一般的な読みとは異なる駅

比較的よく使われる漢字で構成される駅名は、その読み方も広く知れ渡っており難読ではないはず。しかし、なかには一般的な読みとは異なる読み方をする駅名もあります。

1.愛子駅 宮城県(JR仙山線)
2.神戸駅 群馬県(わたらせ渓谷鐵道)
3.古井駅 岐阜県(JR高山本線)
4.放出駅 大阪府(JR片町線など)
5.小林駅 兵庫県(阪急今津線)
6.原田駅 福岡県(JR鹿児島本線など)

1.あやし/2.ごうど/3.こび/4.はなてん/5.おばやし/6.はるだ

愛子駅は2001(平成13)年、皇太子ご夫妻の長女・愛子(あいこ)様が誕生された際、漢字が同じということで話題になりました。名前が発表された同年12月7日には、駅名の入った入場券を記念に買い求める人が同駅に殺到したといいます。しかし、愛子駅の読みは「あやし」。「あいこ」ではありません。

ちなみに関西では、単純なようで読み方が難しい駅が多いといえます。難読駅名としてとくによく知られているのが放出駅。「ほうしゅつ」と読みたくなりますが、実際の読み方は「はなてん」です。

「さき」「ざき」どっちで読む?

「小林」は人の名字でよく見ますが、通常は「こばやし」と読むのに対し、阪急今津線の小林駅は「おばやし」です。ほかに千葉県のJR成田線と宮崎県のJR吉都線にも小林駅がありますが、こちらは「こばやし」と読みます。

なお、九州の地名で「原」は「はる」「ばる」と読むことが多く、原田駅の読みも「はらだ」ではなく「はるだ」です。これ以外にもJR筑肥線の筑前前原(ちくぜんまえばる)駅など、「~はる」「~ばる」と読む駅が多数あります。

漢字の読み方で迷う

漢字自体は比較的よく使われていて読み方も理解していても、複数の読み方があって迷う駅名もあります。

7.山崎駅 北海道(JR函館本線)
8.泉田駅 山形県(JR奥羽本線)
9.甲賀駅 滋賀県(JR草津線)
10.井原駅 岡山県(井原鉄道)
11.大田市駅 島根県(JR山陰本線)
12.広原駅 宮崎県(JR吉都線)

7.やまさき(「やまざき」ではない)/8.いずみた(「いずみだ」ではない)/9.こうか(「こうが」ではない)/10.いばら(「いはら」ではない)/11.おおだし(「おおたし」ではない/12.ひろわら(「ひろはら」「ひろばる」などではない)

「小林」と同様に人の名字でよく見かける「山崎」は「やまざき」と読むことが多いように思いますが、「やまさき」と読む場合もあります。JR函館本線の山崎駅は、駅がある場所の住所が八雲町の山崎(やまざき)ですが、駅自体の名前は「やまさき」です。一方、愛知県内の名鉄尾西線にある山崎駅と、京都府内にあるJR東海道本線の山崎駅は「やまざき」と読みます。

宮崎県内の広原駅は、先に述べた「九州の地名は『原』を『はる』『ばる』と読むことが多い」という知識を持っていると、さらに迷いやすくなるかもしれません。九州の駅だから「ひろはる」または「ひろばる」と思いきや、正解は「ひろわら」。ちなみに、広原駅の隣にある高原駅は「たかはる」です。

「安足間」「妹背牛」共通する難読の理由

ここまでは簡単に読めそうで難しい駅名でしたが、正真正銘の難読駅名もあります。

見慣れない漢字の組み合わせ

駅名のなかにある漢字は比較的よく使われているものでも、漢字の組み合わせが見慣れないものだと、読み方を想像するのが難しいケースがあります。

13.安足間駅 北海道(JR石北本線)
14.妹背牛駅 北海道(JR函館本線)
15.深郷田駅 青森県(津軽鉄道)
16.海士有木駅 千葉県(小湊鐵道)
17.粟生津駅 新潟県(JR越後線)
18.浅海井駅 大分県(JR日豊本線)

13.あんたろま/14.もせうし/15.ふこうだ/16.あまありき/17.あおうづ/18.あざむい

とくに北海道の場合はアイヌの地名に漢字を当てていることが多いため、このパターンの難読駅が多いといえます。安足間は「ふちのあるもの」を意味するアイヌ語「アンタロマップ」に由来。妹背牛はアイヌ語で「イラクサが茂っている場所」(モセウシ)のことです。

漢字自体が難しい

画数が多くて複雑な形の漢字を使っている駅名も、難読のものが多い傾向にあります。このような漢字は学校教育で習うことが少なく、通常の読み方もあまり知られていないためです。

19.留辺蘂駅 北海道(JR石北本線)
20.艫作駅 青森県(JR五能線)
21.驫木駅 青森県(JR五能線)
22.鼎駅 長野県(JR飯田線)
23.飫肥駅 宮崎県(JR日南線)
24.頴娃駅 鹿児島県(JR指宿枕崎線)

19.るべしべ/20.へなし/21.とどろき/22.かなえ/23.おび/24.えい

上記6駅の駅名には、常用漢字表にはない漢字が計7字(蘂、艫、驫、鼎、飫、頴、娃)あります。このうち「鼎」「娃」の2字は人名用漢字ですが、それ以外の5字は人名用漢字にも含まれていません。

【写真】愛子駅前にある「愛子の由来」


「愛子の由来」を解説する案内板。愛子駅の駅前広場に設置されている(2015年7月、草町義和撮影)。

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