「感動的」「商人の鑑」……虎屋17代の休業あいさつ文、称賛相次ぐ

老舗和菓子店「虎屋」のホームページに掲載された文章 に、称賛の声が相次いでいます。書いたのは虎屋17代の黒川光博社長。本社ビルの建て替えに伴い、本日7日いっぱいで赤坂本店の営業を一時休止することを 知らせる内容ですが、ネット上では「商人の鑑(かがみ)」「顧客と丁寧に向き合わないと書けない文章」と話題になっています。

【写真】「行灯(あんどん)」をモチーフにした現在の本社ビル。ライトアップされた画像も

創業は室町時代後期

 虎屋の創業は室町時代後期。京都で菓子屋として始まり、御所にも菓子を納めていました。明治維新後、東京に本拠を移し、小豆と砂糖、寒天でつくる羊羹 (ようかん)の製造販売で有名になり、現在は首都圏や京都、大阪、福岡の百貨店などに80店舗を展開。パリにも出店しています。

黒川社長は東京都生まれ、学習院大法学部卒。銀行勤務を経て69年に虎屋に入社し、91年に17代に就任。全国和菓子協会の名誉会長も務めています。

ご愛顧くださったみなさまへ

 10月2日、虎屋のホームページに、赤坂本店の休業を知らせる「十七代 黒川光博より 赤坂本店をご愛顧くださったみなさまへ」と題したメッセージが掲載されました。

行灯(あんどん)をモチーフにした本社ビルの思い出などを振り返りながら、この51年間で迎えたお客とのやりとりを振り返っています。

「3日と空けずにご来店くださり、きまってお汁粉を召し上がる男性のお客様。毎朝お母さまとご一緒に小形羊羹を1つお買い求めくださっていた、当時幼稚 園生でいらしたお客様。ある時おひとりでお見えになったので、心配になった店員が外へ出てみると、お母さまがこっそり隠れて見守っていらっしゃったという こともありました。車椅子でご来店くださっていた、100歳になられる女性のお客様。入院生活に入られてからはご家族が生菓子や干菓子をお買い求めくださ いました。お食事ができなくなられてからも、弊社の干菓子をくずしながらお召し上がりになったと伺っています。このようにお客様とともに過ごさせて頂いた 時間をここに書き尽くすことは到底できませんが、おひとりおひとりのお姿は、強く私たちの心に焼き付いています」

ネット上で称賛相次ぐ

 このメッセージに対し、ツイッターなどで称賛の声が相次いでいます。

「商人の鑑すぎる」
「すべての広報担当者は読んでおきたい名文章」
「深みのある文章。これぞブランド」
「すごいコンテンツだ。歴史が違うわ、虎屋さん」
「新しいビルができたら買い物に行こう」

取材をお願いすると……

 この件について、虎屋に取材をお願いしたところ、広報課から以下のようなメールが送られてきました。

「この度は取材のご依頼ありがとうございました。 赤坂本店休業にあたっての社長の想いは、ホームページに掲載したメッセージにすべて込められております。たくさんの方に、休業にあたっての挨拶文をお読み いただき、黒川も大変有り難く感じております。大変有り難いお話ですが、この度はご辞退させていただきたく存じます」

本社ビルの完成は3年後の予定です。黒川社長はホームページのあいさつ文を以下のように結んでいます。

「ゆっくりお過ごしになる方、お急ぎの方、外国の方などあらゆるお客様にとって、さらにお使い頂きやすいものとなるよう考えています。新たな店でもたくさんの方々との出逢いを楽しみにしつつ、これまでのご愛顧に心より御礼申し上げます。ありがとうございました」

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