新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したとみられる舞台をめぐり、歌舞伎俳優の尾上松緑さんが怒りをあらわにしている。
2020年8月1日に歌舞伎座の公演再開を予定しているだけに、今回の出来事には一家言あるようだ。
「我々の業界にとって他人事ではない甚大なるダメージ」
松緑さんが問題視したのは、新宿シアターモリエール(新宿区)で6月30日~7月5日に上演された舞台『THE★JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ!!―』。
同舞台をめぐっては、主催する「ライズコミュニケーション」(東京都渋谷区)が12日、主演の山本裕典さん、ナレーターのサッシャさん、俳優のこんどうようぢさん、映画評論家の有村昆さんなど、客を含めて計30人が感染したと発表している。
松緑さんは12日のブログで、「感染者が出てしまった事、感染してしまった事に腹を立てているのではない それは現状、いつでも何処でも誰にでも起こり得る事だから」と前置きしたうえで、一部報道にある「体調不良の出演者が居るのを知っていながら上演を強行」「罹患している可能性が有り、それを分かっていたのに出演し続けている者が居た」「舞台関係のプロフェッショナルなら今、デリケートになるべき握手やサイン等を全然、気を付けないで平気でしていた」の3点に憤慨している。
(※ライズコミュニケーションは、全国公立文化施設協会などの定める感染防止ガイドラインに即していたと説明し、”上演強行”も否定している。一方、松緑さんは「無責任には書きたくないので、伝手を辿って或る程度の確信を持てる話は聞かせて貰った事を先に断っておく」と説明している。)
松緑さんは「はっきり言おう こんな奴等は劇場サイド、主催者、出演者、スタッフに至るまで、どいつもこいつも素人の集まりだ」「舞台業界でのルールも知らない、弁えない素人と言っても過言ではない者達が考え無しでした軽率な振る舞いで集団感染が出た」と切り捨て、「慎め、餓鬼 舞台を舐めるなよ」と警告した。
憤懣(ふんまん)やるかたない背景には、公演再開の目途が立った歌舞伎座などに水を差す格好となったためだ。
「全舞台業界のプロフェッショナル達が血を吐き、涙を流しながら、臍を噛む思いで此処まで我慢して、踏ん張って、踏み留まって来た事が今、水泡に帰したらどう責任を取ってくれるんだ」
「『だからまだ観客を入れてのイヴェント、ライヴや舞台はやめておいた方がいいのではないか』と云う、至極御尤(しごくごもっと)もな意見が再燃して来る羽目となる我々の業界にとって他人事ではない甚大なるダメージを残してくれた」(松緑さん)