「一国一城の主」との言い回しに代表さ れる通り、世帯持ちにとって住宅保有は一つの夢であり目標でありロマンである。しかしその取得価格は半端なものではなく、駄菓子屋で小銭と引き換えにお菓 子を買うがごとく、気軽に購入できる類のものではない。大抵の世帯では一生に一度の買物となる。一方、住宅は保有せずに賃貸で済ますライフスタイルも増え ているとの話もよく耳にする。そこで今回は金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年調査・結果の公開をしている、家計の金融行動に関する世論調査の公開 データをもとに、「持ち家無しの人が住宅を調達しようとする意志と予定時期」について現状や経年変化を確認する(【知るぽると:調査・アンケート公開ページ】)。

単身世帯に多い「持家は要らない」

世帯全体に占める持ち家率は増加する傾向にある。しかしこれは世帯主の平均年齢の上昇に伴うもので、特定世代(中堅層以下の若年層)における持ち家率はむしろ減少傾向にある(【持ち家と借家の割合をグラフ化してみる】)。

今件調査の直近値(2015年)では、単身世帯は25.7%、二人以上世帯では73.1%が持ち家に住んでいると回答している。単身世帯の方が圧倒的に持ち家率が低い、逆にいえば借家住まいの人が多い。

↑ 持ち家率(2015年調査)
↑ 持ち家率(2015年調査)

それでは現在持ち家に住んでいない人、つまり借家住まいや親などの家に同居している人は、将来自家を取得する予定はあるのだろうか。自前で購入する以外に、親などから相続を受ける可能性もあるため、それも含めた回答をしてもらったのが次のグラフ。

↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(2015年)
↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(2015年)

予 算の都合や必要性も合わせて考えれば当然の話ではあるが、二人以上世帯の方が(現在非持家世帯でも)持ち家取得意向が強いのが分かる。また、単純計算で確 率が2倍に増えることから、「持ち家は相続で譲り受ける予定」との意見も、二人以上世帯の方が多い……が、3倍以上との値は単純な確率論を超えた値。「単 身で生活している子供にでは無く、夫婦で世帯を有している子供にこそ、住宅を相続させたい」とする祖父母側の意図がすけて見えてくる。

興 味深いのは単身・二人以上世帯間で「相続予定・時期不明」と「目下考えていない」を合わせた比率に大きな違いが見られないこと。「取得予定なし」はノー、 「何年以内」は明確なスケジュール付きのイエスのため、「取得できる・できない・しない」の差はあれど、「住宅取得について直近で深く考えたことはない、 考えていない」との人は単身・二人以上世帯共に同程度の比率となる。

取得意欲の経年変化を見ると…

これをデータが残っている2007年以降の推移でみると、特に単身世帯で住宅取得意欲が減退しているのが確認できる。

↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(単身世帯)
↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(単身世帯)

↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(二人以上世帯)
↑ 非持家世帯における自家取得予定時期(二人以上世帯)

「相 続予定」「目下考えていない」は多少のばらつきがあれどそれぞれの世帯種類内ではあまり変わらず、具体的年数を決めて取得する意向の値が少しずつ減り、そ の分「取得予定無し」が増えているのが分かる。特に単身世帯の持ち家取得性向の減り方は著しく、2007年から2015年の間に「予定なし」の人が 16.3%ポイントも増加している。取得可能な2007年分以降では、単身世帯における「取得予定なし」の値が前年比で減ったのは、直近となる2015年 分が初めてである。

相続による取得以外では、自宅は自前で手に入れるしかない。相場は比較的安定しているとはいえ、可処分所得の減退や雇用の安定度を考え、取得をあきらめる人が増えており、その実情・心境が反映されていると考えれば、今件グラフの動向も納得がいくものだ。