「数年以内に、レジ打ちという仕事がなくなる」赤羽雄二氏に聞く

マッキンゼーで14年間活躍し、現在も国内、国外の大手企業、ベンチャー企業で経営戦略の立案や実行支援、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリードしているブレークスルーパートナーズ株式会社・マネージングディレクターの赤羽雄二さん。『3年後に結果を出す 最速成長』(KKベストセラーズ)を刊行するのに併せて、最先端のコンサルタントの世界から見た、これからの10年と対応策について訊いてみた。

運転、機械操作、倉庫作業、レジ打ちなどの肉体労働の大半がなくなる

──AIや自動車の自動運転、ブロックチェーンなど、ものすごい勢いでテクノロジーが進化し、一方でほとんどの仕事がなくなるのではないかということも言われています。具体的なイメージを教えてください。

「これからの10年、運転、機械操作、倉庫作業、レジ打ちなどの肉体労働の大半がなくなっていきます。

米国では、テスラ、ウーバーなど自動車会社各社が次々に実証実験などを始めています。宅配便、タクシー、長距離トラックなどで自動運転が始まると、最初は高速道路での運転が、次に比較的交通量の少ない一般道路、そして最後には、市街地の一般道路が自動で運転されるようになります。

宅配便、タクシー、長距離トラックなど、過酷な仕事、人件費が高い仕事から置き換えられていく、と考えておくのが妥当だと思います。倉庫作業は、今アマゾンなどを中心に全力投球でロボット化が進められています。もともと巨大倉庫の中でのピッキングなどは、一日の歩行距離も長く過酷な仕事です。あと何年かのうちに倉庫作業がほぼ全自動になるのは、時代の趨勢です。

スーパーのレジ打ちの仕事は、もっと早くなくなるでしょう。現在でも一つひとつの品物にIDをつけるのは、技術的には十分可能です。また、画像処理によっても、それは可能です。今のところは、コストと取り付けの手間の関係から、まだ普及していないだけだからです。コスト低下は急激に進みますし、消費者が来店中にどの棚からどの商品を取ったのかを検出する仕組みが、アマゾンなどからも発表されています。数年以内には、レジ打ちという仕事がなくなると私は考えています。

他では、運転、機械操作、倉庫作業、レジ打ちなど以外でなくなっていく肉体労働として、スポーツの審判、レストランのレジ係、ネイリスト、集金人、ホテルのレセプション、図書館員、データ入力、建設機器オペレーターなどがあると、英オックスフォード大学の研究から発表され、世界が騒然となりました。その研究では、702の職種から、コンピュータに取って代わられる確率が90パーセント以上の「なくなる仕事」が抽出されたのです。

肉体労働の大半がなくなる結果、どういうチャンスが生まれ、どういうリスクが生じるのか、以下に整理してみましたので参考にしてください。

<チャンスは>

運転、機械操作、倉庫作業、レジ打ちなどを実現するためのAI開発、ロボット開発、センサー開発、システム開発、アプリ開発などの仕事が増える。サービス開始後のカスタマーサポートが当面増える。ただし、カスタマーサポートは数年以内に大部分がAI化されると考えられる。メンテナンスに関して、IOT(アイオーティー。Internet of Things、モノのインターネット化のこと)へのニーズが大きく高まる。故障の未然防止、部品交換の時期表示などがサービス化される。<リスクは>

この10年のうちに、文字通り、運転、機械操作、倉庫作業、レジ打ちなど肉体労働の大半がなくなる。スーパーの生鮮コーナーで魚を3枚におろしたり、トマトをきれいに並べたりするのはハンドリングの問題があり、当分先になるものの、そうでないものは機械で十分できるようになる。肉体労働は体が疲れがちなので、情報収集や技術の発展などに注意を払い続けることが容易ではない。仕事がなくなる可能性が一番高いと考えられる。普段、あまり考えずに仕事をしていると、その仕事が実はまもなく機械に置き換えられてなくなるのか、当分大丈夫なのかがよくわからなくなる。過去数十年はそれでも何とかなったが、これからは、本気で注意していないと大きく足をすくわれる。いったん転ぶと、立ち上がることがほとんどできなくなる。

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