「日本を脅かす隣人たち」──産経新聞“煽りチラシ”の効果

〈日本を脅かす隣人たち ほほ笑みの仮面に隠れた脅威の本質を見失うな〉──ホラー映画の宣伝文句のようだが、実はこれ、産経新聞の購買を呼びかけるチラシ。年度替わりは新規購読者の獲得のために、各新聞とも販売促進のチラシを配布することが多いが、産経のものは見開きで、〈北ミサイル列島通過〉などの大見出しが目に飛び込んでくる。写真は北朝鮮の金正恩氏に中国の習近平・国家主席、そして韓国の文在寅・大統領だ。

「ポストに投函されていたから、思わずビビってしまいました」と語るのは、コラムニストの小田嶋隆氏だ。

「産経新聞は保守系だから、安倍政権支持や憲法改正を訴えるならまだ分かるのですが、北朝鮮や中国、しかも一応は友好関係にあるはずの韓国まで『日本を脅かす隣人たち』に加えてしまっている。ずいぶん排外的だけど大丈夫なのかと思ってしまいました」

小田嶋氏がチラシを受け取った3月24日にツイッターへ写真を掲載したところ、1000件以上リツイートされるなど反響を呼んでいる。いったいどんな意図で作られたのか。

「新聞の購読者が減少する中、ウチは親安倍政権を鮮明に打ち出すことで固定読者を確保し続けてきたが、最近の支持率低下で限界が見えてきた。それより、北朝鮮の脅威や中国の増長、あるいは韓国の反日などを煽ったほうが読者をつなぎ止められるというのが狙いだと思う」(産経関係者)

田島泰彦・上智大学新聞学科教授の分析はこうだ。

「佐川氏の証人喚問翌日、他紙が軒並み佐川氏を1面トップに据える中、産経だけは『金正恩氏、電撃訪中』と大見出しを打った。たしかに日本外交にとっての重大事ですが、最近の産経は森友問題など安倍政権への逆風から読者の関心をずらすように、中韓・北朝鮮の問題を大きく取り上げているようにも見えてしまう。件のチラシにも同じ傾向を感じます」

産経新聞に聞くと、「販売・宣伝に関することにはお答えしておりません」とのこと。「日本を脅かす隣人たち」に、天敵の朝日新聞も加えたいところか。

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