国産ワインの評判がいい。中でも日本のブドウを原料に国内で醸造された「日本ワイン」は数%のシェアだが、輸入ワインに引けを取らない高い品質が支持されている。日本の気候風土を生かしたきめ細かい栽培・醸造法が豊かな味わいを生み、和食とも合う。「国産」にこだわるワイン愛好家らによる「日本ワインを愛する会」が旗振り役となり、普及に努めている。(日出間和貴)
◆目標でき品質向上
大手飲料メーカーのメルシャン(東京都中央区)が昨年、料飲店を対象に「注目している、または関心のあるワイン原産国」を聞いたところ、日本が首位でフランス、チリが続いた。消費者では、日本はフランスに次いで2位。国産への期待度の高さを裏付けた。
「ひと昔前まで国産ワインというと、濃縮なイメージが強く、ワイン通の間で評判がいまひとつだった。しかし、海外で醸造・発酵技術を学んだ若手醸造家らが切磋琢磨(せっさたくま)してきたことで、質の高い国産ワインが生まれるようになった。土地の個性を生かし、栽培にも工夫が凝らされてきた」(同社ワイン営業本部商品部の森裕史国産グループ長)
国産ワインの中でも、純粋に国産ブドウだけを原料にして造られたものを「日本ワイン」と呼ぶ。ここ数年、日本ワインにこだわるレストランが増え、平成16年に結成された「日本ワインを愛する会」はサイト(http://www.jp-wine.com/)で、日本ワインを提供するレストランを紹介。山本博会長は、国産ワインが普及してこなかった理由の一つに「日本の醸造家に目指すべきターゲットがなかったこと」を挙げる。しかし、15年から山梨県を舞台に国産ワインコンクールが始まり、目標ができたことが品質向上につながっているという。
◆全国に幅広く点在
ワイン通になる近道は「ワイナリーツアー」などに参加し、実際にワイナリーに足を運ぶことだ。国内のワイナリーは山梨、長野両県の甲信越地方に多いが、実は北海道から九州まで幅広く点在。「ワインは土地の風土を表現する」といわれるように、ブドウの種類だけではなく土壌や気候風土によって味わいは異なる。
「東北から世界基準を」。海外でも通用する高品質のワインを目指す高畠ワイン(山形県高畠町)は、果樹王国の恵まれた環境を生かし、手頃な価格から提供。同社の川辺久之取締役は「日本ワインといっても国際競争の中で考えないと生き残れない。日本にもポテンシャルの高いワインがあることを知ってほしい」とアピールする。「いいちこ」などの麦焼酎で知られる三和酒類(大分県宇佐市)は地域に根ざした「安心院ワイン」の開発を進め、高いブランド力を築いてきた。
山本会長は「海外のワイナリーは自社畑でのブドウ栽培が原則だが、日本は所有畑の面積が小さく、農地法の関係で法人メーカーは自社畑をなかなか所有できない。そのため、良質ワインの生産者は契約栽培農家を確保し、ブドウ栽培の指導を行ってきた。ブドウ農家の意識改革が今後の日本ワインの将来を左右するだろう」と話している。