「暴力活動家」に悩める捕鯨の町 脅迫状、暴行…-

 国内古式捕鯨の発祥地、和歌山県太地町で昨年12月、暴行容疑で米国の反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)支援者のオランダ国籍の男が逮捕、起訴された。これまでにも漁の様子を執拗(しつよう)にビデオで撮影するなど、いやがらせ行為が繰り返されるなかでの事件。現在も反捕鯨団体の活動家らの滞在が続き、住民らの悩みの種になっている。(田中俊之)
 太地町を舞台にイルカ漁を批判的に追った米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」がアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞し、注目を集めたこともあり、人口3200人の町には、世界中から反捕鯨団体が集まっている。
 事件は昨年12月16日に起きた。外国人の男がクジラの搬送作業が行われる現場に侵入しようとし、制止した警備中の男性の胸を突いた。近くにいたパトロール中の警察官が暴行容疑で男を現行犯逮捕。SSの支援者で、オランダ国籍のアーウィン・マルコ・ピーター・アド・フェルミューレン被告(42)=暴行罪で起訴=だった。太地町でクジラ漁に絡む撮影をしていたとみられる。
 SSの撮影活動の背景には、寄付収入確保や勢力拡大があり、映像をインターネットで発信し、捕鯨やイルカ漁の妨害を世界にアピールしている。
 違法行為やいやがらせ行為に対処しようと、県警と第5管区海上保安本部は昨年9月の漁解禁を前に、連絡会を開くなど連携を強めてきた。
 太地町漁協参事の貝良文さん(51)は「暴力的な活動家は徹底的に取り締まってほしい」と期待を寄せるが、昨年9月には町漁協に反捕鯨団体によるとみられる脅迫状が届くという不気味な事案も起き、住民の不安は消えない。
 県警公安課によると、現在、町内にはSSを含む2団体の関係者10人前後が滞在。イルカ漁が解禁された9月1日以降、約80人の活動家らが訪れ、立ち入り禁止区域に侵入したり、漁師に暴言を吐いたりするなどの妨害行為を行い、これまで約25件の指導警告を行ったという。
 26日には、フェルミューレン被告の初公判が和歌山地裁で開かれ、支援者らが傍聴した。27日も公判があり、裁判所周辺では関係者が警戒を強めている。

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