使用者が労働者に支払わなければならない賃金(時給)の最低額をさだめた「最低賃金」が10月1日から、各都道府県で順次引き上げられている。
全国平均では780円から798円になり、18円の引き上げが行われる。東京都では888円から907円へ、神奈川県では887円から905円へと引き上げられた。一方、沖縄や鹿児島、熊本など16の県では600円台で、地域ごとに格差があるのが実情だ。
また、使用者や労働者への周知も課題となっている。埼玉労働局が今年1月~3月に県内の従業員30人未満の495事業所に監督指導したところ、74の事業所で、計338人が最低賃金以下で働かされていたことがわかった。
最低賃金以下で働かせることは、法的にどんな問題があるのだろうか。労働問題に詳しい河野祥多弁護士に聞いた。
●違反した事業者は罰金の対象になる
「最低賃金制度とは、労働者の生活を守るために、国が地域ごとに賃金の最低限度を定め、雇用主は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です」
もし、使用者が最低賃金を下回る時給しか支払わなかったら、ペナルティはあるのだろうか。
「この最低賃金未満の賃金しか支払わないという違反があった場合、雇用主は、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。その他にも、50万円以下の罰金の対象となります。
さらに、雇用主は、勤務場所の見やすい場所に掲示するなどの方法により、労働者に対して最低賃金の概要を周知する義務があります。違反すると、30万円以下の罰金の対象となります。
今までも、最低賃金以下の事業所は多数存在していましたが、改正後は、それが増えることが懸念されます。事業主の方には、制度の趣旨をきちんと理解していただきたいと思っています」
●現状では全国均一にするわけにはいかない
地域ごとに格差がある点については、どう考えればいいだろうか。
「最低賃金を定めるにあたっては、地域における労働者の生計費や賃金、通常の事業の賃金支払能力を考慮しています。
一般的に、物価の高い地域は、給与水準も高く、また、必要とされる生活費も高くなるため、最低賃金は高くなります。逆に、物価の安い地域の最低賃金は低めになるという差が生じてきます。
最近では、物流やネットの普及で、一般消費財の値段はそれほど変わらなくなりつつありますが、やはり、家賃等の価格に大きな差がある以上、全国均一の金額にするわけにはいかないのが現状でしょう」
河野弁護士はこのように述べていた。