「月額1000円」スマホに照準 増える定額見放題

映画や過去のテレビ番組を「定額見放題」で提供するインターネットサービスが続々と登場している。以前はパソコンでの視聴が主流だったが、最近はスマートフォン(スマホ、高機能携帯電話)やタブレット端末に主戦場が移り、価格帯は「月額1000円」前後に集中。定額見放題の増加は、コンテンツの楽しみ方を変えそうだ。(織田淳嗣)
 ■NHKが先行
 米ロサンゼルスに本拠地を置く動画配信サービス「Hulu(フールー)」は、昨年9月に日本でサービスを開始。「24」などの米人気ドラマや日米の映画計5700本以上が見放題で、当初は月額1480円だったが、今年4月に980円へ値下げした。運営のフールージャパンによると、利用者から値下げの要望があり、権利者への還元を踏まえ、利益確保できる価格設定として「980円が最適」と判断したという。
 昨年8月に見放題をスタートしたアニメ中心の「バンダイチャンネル」では、税抜き月額1千円という価格設定について「悩んだが、最終的に切りが良く支持されやすい料金設定にした」(広報担当者)と説明。NTT系の「ひかりTV」は昨年12月、光回線を利用していない人も対象にスマホ向け見放題サービスをスタート。月額350円で数百本、1千円で数千本のソフトを提供している。
 この「見放題」に先鞭(せんべん)を付けた大手は、平成20年12月に月額1470円でスタートした「NHKオンデマンド」だ。22年2月に945円に値下げし、売り上げを同年1月の約1400万円台から8月に約2200万円へと増やした実績がある。情報通信総合研究所の志村一隆・主任研究員は「NHKオンデマンドは一つの先行指標になっているのでは」と話す。
 携帯電話の大手3キャリアも、月額490~590円でスマホでの見放題サービスに参入した。
 ■競合サービスも
 調査会社のサーベイリサーチセンターが今年5月、レンタルビデオショップの顧客などを対象に行ったネット調査(有効回答は15~69歳の523人)では、定額料金の「許容範囲」は月額500円以上が67・9%、1千円以上が42・3%で、1千円が「課金限界」であることがうかがえる。
 また、映像視聴手段はテレビが80・5%でトップ、パソコンが74・8%で2位。携帯端末では従来型の携帯電話が28・3%、スマホ21・4%、タブレット端末12・8%-にとどまったが、今後の利用意向ではスマホ46・1%、タブレット端末44・6%-と半数近くを占め、市場の拡大を予想させる。
 志村氏は「定額見放題のサービスは、今後4年で1億2千万台ともいわれるスマホの将来の普及を見越したビジネスモデルだ」と指摘する。また、「1日のうち映像を見る時間が限られている以上、テレビのリアルタイム視聴は減り、レンタルビデオ店でのパッケージのレンタルも減っていくだろう」とも。さらに、アニメなど専門性の高いCS、BSチャンネルも、同じ分野の見放題サービスとの競合は避けられない。
 BSではWOWOWが加入者限定でスマートフォンやタブレット端末でも同社放送の番組が見られる「WOWOWメンバーズオンデマンド」を7月から始めるなど、既に顧客囲い込みの動きが出始めている。映像視聴の手段がどこまでモバイルにシフトするのか、今後の動きが注目される。

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