「木材利用ポイント」上手に活用 住宅建築、最大60万円分お得

 おトクな制度を活用して住宅購入を-。予想される消費増税を前に住宅着工戸数が増えるなか、今年度新たな優遇制度「木材利用ポイント」が注目されている。木造住宅の新築などにスギやヒノキなど対象地域材を使うと、最大60万ポイント(60万円分相当)が付与されるというこの制度とは。(堀口葉子)
【グラフで見る】日本の木材供給量の推移
 木材利用ポイントの対象は、スギ、ヒノキ、カラマツなど対象地域材を主要構造材として半分以上使った木造住宅の新築・増築・購入のほか、内装・外装の木質化工事、木材製品や木質ペレットストーブの購入など。今年度内の着工や購入のものとしている。
 利用者のメリットは、木造住宅1棟あたり30万ポイント(30万円相当)。その30万ポイントと、内装・外装の木質化の上限30万ポイントを合わせると最大60万ポイントが付与される計算だ。それらは地域の農林水産品や商品券などに交換できるほか、施工業者が同じ工事で別の木材を使った工事費にも即時充当できる。
 制度を創設した林野庁の末松広行・林政部長は、その狙いをこう説明する。「戦後に植林した木がまさに使える時期に入っている一方で、地域材を住宅建築などに役立てる取り組みが進んできていない。そのミスマッチをなくす上で地域材を使うことによるメリットを形にした。地域材を使うことで地域経済を活性化し、森林も整備され、環境にも寄与すると考えている」
 森林が整備されれば、二酸化炭素(CO2)の吸収能力が上がり、豊かな土壌による水源涵養(かんよう)の機能も期待できる。林野庁は循環型社会の形成に向け、現在の木材自給率27・9%を50%に引き上げる目標を掲げている。林野庁はこれまでも、曲がり材や間伐材による合板などを安定供給する体制や、生産・流通・加工のコストダウンなどを進めてきた。さらに、今回の木材利用ポイントは住宅会社に地域材の利用を拡大させている。
 大和ハウス工業は初めて、柱やはりなどの構造軸組材を100%地域材仕様にした木造住宅の新商品「ジーヴォ グランウッド」を3月から発売した。「当社はもともとCSR(企業の社会的責任)として、生物多様性やCO2削減に向けた地域材の普及を強化してきた。今回、100%標準仕様のため、日本の森林の状況を知らないお客さまも環境に貢献できるし、意識も高まると思う」と、住宅商品開発部の河野友弘・木造商品設計グループ長は話す。
 同社は木造住宅、鉄骨住宅で5000戸程度のポイント利用者を見込んでいる。積水ハウスも北欧材を標準としていた木造住宅「シャーウッド」に、柱とはりをまるごと地域材にした「シャーウッド 純国産材プレミアムモデル」を加え、4月から発売した。「はりまで採用するのは難しかったが徹底した。お客さまの環境への意識が高まるなか、選択肢としてプレミアムを育てていく」と、吉田元紀・技術部部長は話す。
 ユニバーサルデザイン総合研究所の赤池学所長は、「住宅会社が地域材を取り入れたことが大きな効果。今、ビルや店舗にも地域材が採用され始めているので循環型社会の構築が加速されるだろう」とみている。ただ、来年度以降の適用は未定で、川上から川下まで加速する流れを止めないためにも、制度の長期継続が期待される。

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