山形県遊佐町で、今月に入りサケの遡上(そじょう)が本格化している。海水温上昇の影響とみられる不漁は続くが、7月の記録的大雨で冠水した施設は被災から立ち直り、ようやく活気づいている。
鳥海山から流れる月光川水系に三つあるふ化場の一つ、箕輪鮭漁業生産組合は清流で知られる牛渡川沿いにあり、河口から3キロと近く、サケが体力消耗前に上ってくる。以前は1シーズン6万~8万匹が遡上したが、昨季は2万匹を切った。3、4年前から毎年1万匹ペースで減り、往時の2~3割に過ぎない。
時期も遅れ、今季は10月中旬から見込んだが空振り続き。先月下旬からようやく上向き、1日400~700匹とまとまった数が上がるようになった。
おりに入ったサケをたも網ですくい、こん棒でたたいて失神させる。雄と雌を仕分け、採卵して受精させる。イクラや生サケは即売され、隣県から買い求めに来た人もいる。
国の水産研究・教育機構(横浜市)のデータによると、太平洋側の記録的不漁を受け、山形県は2020年度以降、河川での捕獲数が本州最多になった。同組合もここ数年、受精卵を宮城、岩手、福島に供給している。
佐藤仁組合長は「不漁続きと大雨被害に悩まされたが、サケが来れば活気づく。太平洋側にも何とか卵を渡せそうだし、年末にかけ上積みを期待したい」と笑顔を見せた。