【トロント=庄子晃市】米大リーグ、ヤンキースの田中将大投手が4日、カナダのトロントで行われたブルージェイズ戦で初先発し、メジャーデビューを果たした。スタンドには、東日本大震災で被災した石巻市長面地区出身で、トロントに住むモガール高橋和子さん(68)が駆け付け、東北から巣立った日本のエースの勇姿を見守った。
「マー君 東北への支援と元気をありがとう」。高橋さんは日本語と英語で書かれた手作りの旗を掲げ、声援を送った。プロ野球東北楽天を日本一に導くなど被災地を元気づけた田中将投手の昨季の活躍や、復興支援活動への感謝を込めたという。
国際結婚した高橋さんはトロントに住み32年。震災で兄家族4人や親類、母校である石巻市大川小の同窓生らを亡くした。2カ月後に変わり果てた故郷を訪れ、「悪い映画を見ているようだった。現実を受け止めるのに時間がかかった」と振り返る。
震災直後からトロントで募金集めに奔走し、昨年、石巻に戻った際、地元関係者に200万円を寄付した。ことし3月11日は息子のデニスさん(27)とともに大川小を訪れ、祈りをささげたという。
「ロジャース・センターのブーイングには驚いたと思う」と高橋さん。田中将投手に「北米は移動距離が長く時差もあるので、健康管理に気を付けて。これからも長く東北に元気と勇気を届けてくれるように、息長く活躍してほしい」と願いを託した。
◎仙台興奮/「実力は本物」「本当にすごい」
仙台市青葉区のスポーツラウンジ「T・R・G・E」は、田中将投手の登板に合わせ、午前11時の開店時刻を3時間繰り上げた。田中将投手は一回、先頭打者に本塁打を打たれたが、三回以降は立ち直り、店内では打者を打ち取るたびに拍手が起こった。
開店直後に訪れた仙台市宮城野区の会社員門馬克彰さん(50)は「いきなり本塁打を打たれてびっくりしたが、その後は仙台でマウンドに立つ田中投手そのものだった」と興奮気味に話した。東京都町田市の会社員後藤馨さん(54)は「尻上がりに良くなった。実力は本物」と感心していた。
東北楽天のホームゲーム開催日と重なり、仙台市宮城野区の楽天Koboスタジアム宮城(コボスタ宮城)には田中将投手の勝利を見届けてから来場したファンも。一関市の小学5年佐々木葵(まもる)君(10)は「三振を取った後の顔が格好良かった。プレッシャーに負けずに投げ、本当にすごい」と話した。
北海道・駒大苫小牧高時代からのファンという大阪市浪速区の会社員海田聡浩さん(53)は「初登板で7回3失点なら上出来。経験を積み、いいピッチングをしてほしい」とエールを送った。