「核爆弾で日本を消せ!」 デマ、臆測だらけの中国SNS…なぜ日本人学校が近年ターゲットになったのか

プロパガンダの天才としてナチスドイツで宣伝大臣を務めたヨーゼフ・ゲッベルスは、「うそも100回言えば真実となる」と語っていたという。かの国のネット民たちの有様を見れば、その言も当を得ている感がある。反日をあおるネットのショート動画やSNSのメッセージを放置し続けた中国政府こそが、今回の悲劇を生んだ張本人ではないのか。 【写真を見る】中国のSNSで出回っている「父の手紙」  ***

〈よくやった、日本の子供をもっと減らせ〉 〈日本鬼子の首を切り落として、東京を更地にすべきだ〉  深センの男子児童殺害事件後、中国国内のSNSでは、見るに堪えない罵詈雑言で溢れかえっている。 〈核ミサイルで日本を地上から消せ〉  なんて物騒な物言いまで出てくる始末だが、なにもこうしたメッセージは、極端に偏ったネット民だけが発しているわけではない。

〈罪がある日本人の子を殺しただけ〉

 9月23日、香港フェニックステレビ系列のニュースサイトは、四川省のカンゼ・チベット族自治州新竜県の黄如一副県長が、SNS「ウィーチャット」のグループチャット上で、 〈子供を殺すことはたいしたことなのか?〉 〈(歴史的に)罪がある日本人の子を殺しただけ〉 〈われわれの規律は日本人を殺すこと〉  などと発言していたことを報じたのである。  地方政府の幹部とはいえ、中国では立派な肩書を持つ国家公務員までもが、事件を正当化してはばからない。  今や中国のネット空間では、庶民から役人まで「反日感情」をあらわにすることが常態化している。

ここ数年「日本人学校」がターゲットに

 そんなネット民たちにおける格好のターゲットが今回、事件の舞台となった「日本人学校」だった。 「これまでSNSの日本批判といえば『靖国神社』『尖閣諸島』が定番でしたが、実は数年前から『日本人学校』も対象になっていたのです」  と解説するのは、中国事情に詳しいジャーナリスト。 「中国版の動画投稿サイトで〈日本人学校〉と検索すると、中国国内にある日本人学校の前から配信された動画をいくつも見つけることができます。転載を繰り返されている有名な動画では、配信者である初老の男性が日本人学校の校門前で『ここは日本租界か!』と興奮気味にまくしたてる様子が映されています」  別の動画を観ると、配信者が日本人学校の周囲を歩きながら、防犯カメラを見上げて「なぜこんなに閉鎖的なのか」と嘆いてみせる。また別の動画では、警備をしている中国人にカメラを向けてとがめられると、「小日本に雇われた犬め」と怒号を飛ばす。  アクセス数が多ければ小遣い稼ぎにもなるわけで、いわゆる迷惑系ユーチューバーのごとく、警備員との小競り合いをくり返す。面白おかしく撮影するのがお決まりのようだが、これだけでは終わらない。

「実に怪しい」

 上海の日本人学校へと足を運んだ動画の配信者は、こう述べているのだ。 「2万平米の敷地を厳重警戒。正門には『中国人立ち入り禁止』と書かれている。なぜ中国の領土に日本人しか受け入れない学校があるのか。実に怪しい。教材は日本から輸入。閉鎖的な軍事化教育、生徒は全員中国にいる日本人の子供。教師から清掃員まで全員が日本人。生徒は全員工作員だ。日本の中国侵略に大いに情報貢献している」  中国のみならず、海外にある「日本人学校」は文科省が認定した在外教育施設にあたる。児童・生徒の保護者は企業の駐在員などが多いため、帰国後も日本の学校に進学できるよう、文科省の指導に則った教育を実施している。  ゆえに「教材は日本から輸入」「生徒は全員日本人の子供」でも何ら不自然はないわけだが、中国の動画配信者、それに喝采を送る視聴者らには目を背けたい不都合な真実なのだろう。  付言すれば、中国大陸の日本人学校は9都市に10校あるが、前述した動画の多くが〈日本人学校は35校〉と誤った数を紹介して〈なぜこんなに多いのか〉と批判し続けている。事実関係は一切無視して、デマや臆測を流すことに血眼になっているというワケだ。

調べれば分かるような疑問

 再び先のジャーナリストに聞くと、 「昨年3月には、香港俳優のボビー・オウヤンがSNS上で〈日本は中国で多くの学校を建てたが日本人専用であり、中国人の立ち入りを禁止している〉と言い出して、〈合理的な説明〉を求めたのです」  皮肉なことに、その答えは中国人自らがネット検索で知ることができる。 「日本人学校は現地の日本人会や商工クラブなどが主体で設立したものですが、その許可を出すのは中国政府なわけです。そして外国人駐在員の子女が通う学校に関する規定があり、その第17条に〈領域内での中国国民の子弟の募集〉を行った場合、是正や業務停止命令の可能性があるとしています」(同)  中国以外の国にある日本人学校では、現地で暮らす外国籍の子供たちも受け入れて「国際学級」を設けているところもある。それを禁止しているのは、他ならぬ中国政府なのだ。  調べれば分かるような疑問を、あえてSNS上で疑惑に仕立て上げては反日感情をあおり続ける。実際、件の香港俳優は“愛国者”だとネット民たちから絶賛され、日本人学校を批判する世論は日増しに高まっていったというのである。  今回の悲劇を中国政府の報道官は「偶発的な出来事」だと言い張るばかりだが、いくら虚言をくり返そうとも、幼い命が失われた事実は決して消えることはない。  関連記事【運動会で「安倍元総理暗殺」の寸劇… 中国のあきれた反日教育の実態 「日本兵に見立てたわら人形に銃剣を刺す訓練も」】では、中国のひど過ぎる反日教育の実態について報じている。 「週刊新潮」2024年10月3日号 掲載

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