河野太郎外相は27日の記者会見で、1965年の日韓請求権協定に関し、「韓国が歴史を書き換えたいと考えているならば、そんなことはできないと知る必要がある」と韓国側を批判した。外国人記者からの「韓国政府が『日本は歴史問題への理解が足りない』と指摘していることにどう答えるか」との質問に答えた。質疑は英語で行われた。
韓国国内では、1910年の日韓併合を中心とした戦前・戦中の日韓関係を巡り、日本国内の「歴史修正主義」が強まっているとの見方がある。当時の日韓関係を清算するための65年の協定についても、「軍事政権下で結ばれた」との不満が強い。その協定を取り上げて「歴史は書き換えられない」とした河野氏の発言は、韓国側の反発を招く可能性が高い。
「最も重大な問題は65年の協定」
河野氏は会見で、「日韓間で最も重大な問題は、65年の協定に関することだ」と述べた。その上で「歴史は書き換えられない」と指摘した。元徴用工や慰安婦を巡る問題などで過去の合意を覆す韓国側への不満が背景にあるとみられる。
日韓請求権協定は、日本が韓国に無償供与3億ドル、長期低利貸し付け2億ドルの経済協力を行う一方、元徴用工への損害賠償を含む請求権問題は「完全かつ最終的に解決」したと記している。
だが、韓国最高裁は昨年10月の判決で、「不法な植民地支配で受けた個人の慰謝料請求権は協定の対象外だ」と判断し、日本企業に賠償を命じた。日本側は韓国政府に賠償の肩代わりなど判決の無効化を要求。韓国政府は日韓企業が元徴用工に金銭を支払う案を提示したが、日本側は「協定違反の是正にならない」として拒否した。
「GSOMIAと輸出管理は全く次元違う」
一方、韓国の李洛淵首相は26日に、安全保障に関連する物品の輸出管理で、手続きを優遇する対象国「グループA(ホワイト国)」から韓国を除外する決定を日本側が取りやめれば、韓国側も日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄の判断を再考するとした。これについて河野氏は「GSOMIAと輸出管理は全く次元の違う話だと申し上げている。韓国側に賢明な対応をしていただきたい」と述べた。優遇対象国から韓国を除外する政令は28日に施行される。【秋山信一】