「殺人ワクチン」「世界に大革命」大阪の学習塾運営会社、不安あおるミニコミ紙を住宅に大量投函

学習塾を運営する大阪市の会社が今月初旬、新型コロナウイルスワクチンの体への影響について、誤った情報に基づいて不安をあおる内容の印刷物を、大阪府内の多数の住宅に投函とうかんしていたことがわかった。専門家は「科学的根拠のない情報に惑わされないように注意してほしい」と呼びかける。

 この会社は「類設計室」(大阪市淀川区)で、小中学生らを対象に大阪府内など約50か所で学習塾を展開。毎年、難関校の合格者を出しているという。

 配布したのは「週刊 事実報道」と題した同社発行のミニコミ紙。ワクチンによる死亡が、感染による死亡より多くなるとし、「殺人ワクチン」と記しているが、示された数字に根拠はなかった。流産が高い割合で報告され、不妊症になる恐れがあるとも主張。「生殖障害が伝染する」との誤った情報も紹介していた。

 こうした説は海外のSNSなどで広まり、すでに専門家らに否定されている。米国では、接種した妊婦約3万5000人に対する調査の結果、副反応の頻度は妊娠していない女性と同程度で、胎児や出産への影響はないと報告されている。

 ミニコミ紙は、これまで「欧州の貴族連合・奥の院」の存在を主張し、「コロナ騒動を起こし、世界に大革命を起こそうとしている」などと掲載。同社のウェブサイトによると、通常は有料だが、今回は無料で約58万世帯に配布したという。

 自宅に投函された同府高槻市内の40代の男性は「中学生の娘には、信じてはいけないと教えた。根拠のない話をばらまくのはやめてほしい」と憤る。

 同社に取材を申し込んだが、「応じられない」との回答だった。

 医師らでつくる新型コロナワクチンの情報発信サイト「こびナビ」を運営する千葉大病院の黒川友哉医師は「発熱などの副反応が起きる可能性はあるが、接種しない場合、感染後の発症や重症化のリスクもある。世界中の接種者のデータを専門家が分析した様々な結果が公表されている。不確かな話ではなく、公的機関などが出す情報に基づいて判断してほしい」と話す。

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