訪日客増加に伴う宿泊需要に対応するため、政府系金融機関の日本政策投資銀行が、住宅などを使って宿泊サービスを提供する「民泊」の運営に特化した不動産ファンドを設立したことが分かった。民泊市場の拡大を後押しする狙いがある。国内の銀行としては初めての取り組みという。 【写真】築53年の家を民泊用にリフォームしているスウェーデン男性
政投銀が傘下の運用会社を通じて9月末にファンドを設立し、最大30億円を出資。旅行会社など関連企業からの出資や金融機関の融資も呼び込み、総額100億円規模に拡大させたい考えだ。
資金の拠出先は当面、採算の見込める都市部を念頭に置く。第1弾として、東京23区内のマンション計5棟を購入した。
このうち120室程度を民泊運営で国内大手の「マツリテクノロジーズ」(東京)に貸し出し、運営してもらう。同社は無人でチェックインに対応できるシステムなど、デジタル技術に強みを持つ。
民泊市場は低迷気味だ。近隣との騒音トラブルや清掃の不備といった問題が相次ぎ、2018年に適切な運営を促す住宅宿泊事業法(民泊法)が施行。年間の営業日数が180日以内に規制され、採算が合わず撤退する業者が増えた。観光庁によると、同法に基づく届け出は今年9月時点で累計約4万3000件に上るが、このうち事業廃止は約1万7000件と4割に達する。
資材費の高騰や人手不足で宿泊施設の供給に限界がある中、適正な民泊市場の形成が課題となっている。政投銀は民泊ファンドの活用を通じ、観光産業の活性化につなげたい考えだ。