「水分補給は「冷水」か「常温水」どっち?内臓を活性化させ老廃物などを多く排出」

秋を迎え、過ごしやすい季節がやってきました。運動不足の方は興味のあるスポーツで体を動かし、生活習慣を変えてみることをおすすめします。思い切り汗をかくとストレスも解消されますし、野球のようなチームスポーツでは仲間とのコミュニケーションも楽しめます。ゴルフならばコースを歩き回るので足腰が鍛えられるなど、スポーツにはいくつもの効果があります。

運動で汗をかいたら水分補給が必要です。運動時の発汗量は多い時で1時間当たり2リットルにも及びます。人間の体は6割が水分だけに、体内から2%の水分が排出されるだけでめまいや吐き気を催すなど、体調不良につながります。

汗をかいたあとほど冷たい水を一気に飲みたくなります。ただ、適切に水分を摂らねばパフォーマンスは落ちますので「喉が渇いた」と感じたらすぐに水を飲むべきですが、ここで問題です。水分補給の水は「冷たい水」と「常温の水」では、どちらがより健康的と言えるでしょうか。

実は、夏の甲子園で名物となっている「かちわり」が、理想的な水分補給です。「氷が入っていて冷たいじゃないか」と思われるかもしれませんが、ストローで溶けた氷水を少しずつ吸うように飲むため、1口当たりの水分量は少なく、胃や腸に負担がかかりません。氷を舐めているようなもので、胃を冷やさずに済みます。。氷嚢として首を冷やすこともできますし、糖分もないので太ることもありません。理想的な「クーリングシステム」と言えます。

しかし、このかちわりを冷たいまま一気飲みするとなると、事情は変わります。冷水は喉を冷やしますが、数分すれば、もとの温度に戻ります。ただし、吸収された冷水は胃にたまり、一気に冷えた胃は熱を高めて肝臓と心臓を守ろうとします。この熱の高まりにより、30分もするとかえって体温を上げてしまいます。

しかも、体温調節をする褐色脂肪細胞が冷水で刺激され、もっと体を温めようと活発化し、ため込んだ脂肪と一緒に燃焼してくれる。痩せる目的であれば効果もありますが、そうでなければ冷たい水は喉を気持ちよくさせているだけです。

冷水は胃だけではなく、心臓にも負担をかけます。不整脈を起こしたり、心房細動を患っている人は発作が起きやすくなります。何より胃腸の動きも鈍ります。高齢者の場合はキンキンに冷えた水は極力、避けてください。

さて、水を用いた有効的なダイエット方法が存在するのをご存じでしょうか。人間は1日当たり平均2000キロカロリーの摂取を必要としますが、このうちの6割ほどを食事で摂り、残りの4割を水でごまかすのです。ごはんやパンなどの炭水化物には糖分が含まれており、摂取した分だけ糖質も増えますが、これを水でカバーすると余分な栄養素を摂らずに済むわけです。いわゆる「水ダイエット」ですが、トイレの回数が増えるので老廃物を多く出せますし、代謝が高まって肌にも効果的です。

体には尿2リットル分の老廃物がありますが、2リットルの水を飲めば老廃物が出せるとも言われています。常温の水を糖分の代わりに摂るのも一つの手です。

汗をかいたあともそうですが、朝起きた際に摂取してほしいのが「白湯」です。お湯は前述のような副作用がなく、逆に胃を活性化させて消化能力を高めてくれます。腸が上手に働き始めるため便秘の解消にも役立ちます。腸が弱くて下痢をしやすい人でも、刺激となりません。血液の循環をよくして動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞を予防する効果もあるのです。塩素が心配な方は、沸騰させれば塩素は飛ぶため、水道水を沸かして冷ませばOKです。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

タイトルとURLをコピーしました