2025年の次期年金制度改正では、現在40~50代の「就職氷河期世代」を念頭に置いた低年金対策が焦点となる。 【ひと目でわかる】世代別の年金額の分布状況の推計 年金財政検証では、厚生年金に加入できるパート労働者らの対象を拡大する案や、将来世代の負担を減らすための受給額の減額調整を見直す案に、給付改善効果が確認された。ただ、いずれの案も事業者や国民の負担増が不可避。政府・与党内での議論は難航しそうだ。 ◇約4割が月10万円未満 氷河期世代である1974年度生まれの50歳の人が65歳時点で受け取る年金額(現在の物価水準ベース)の分布状況を推計したところ、全体の39.1%が月10万円未満だった。このうち18.1%が月7万円未満、5.7%は月5万円未満になる可能性がある。この世代は非正規雇用が多く、年金加入期間も短いためだとみられる。 現行制度のままだと、年金の減額調整は2057年度まで続く見通しだ。慶応大学の駒村康平教授(社会政策)は「氷河期世代の年金額は老後も減り続け、生活保護に陥るリスクが高くなってしまう。40年ごろまでに改善効果が出る低年金対策を講じる必要がある」と訴える。 ◇減額調整、前倒し終了 具体的には、給付の手厚い厚生年金の適用拡大が考えられる。厚生年金は従業員101人以上(今年10月から51人以上)の企業に義務付けられている。対象の労働者は週の所定労働時間20時間以上で、賃金月8万8000円以上だ。 この要件を見直し、週10時間以上働く全ての人に広げると、新たに約860万人の非正規・短時間労働者が厚生年金に加入できる。これにより、現役世代の手取り収入に対する年金の給付水準である「所得代替率」は、現行のままだと50.4%で下げ止まるのに対し、56.3%に改善。減額調整も38年度に前倒して終了することが可能だ。 ほぼ全ての短時間労働者が厚生年金に入るので、保険料負担による収入減を避けて就業調整する「年収の壁」問題も生じなくなる。 ただ、厚生年金は保険料の半分を事業主が負担するため、適用範囲を一気に広げると小規模企業の経営が成り立たなくなる恐れがある。政府関係者は「企業規模や賃金の要件などから段階的に見直すしかない」と話す。 ◇国庫負担増が課題 もう一つは、厚生年金の積立金を活用して基礎年金の給付水準を改善させ、減額調整が終了する時期を57年度から36年度へ短縮する案だ。所得代替率も56.2%まで上がる。 ただ、基礎年金の給付額の半分は国庫でまかなうため、政府は36年度以降に給付水準の改善に伴う追加財源の拠出を迫られる。試算では50年度時点で年1兆8000億円が必要で、自民党内には「増税論議が避けられない」(閣僚経験者)との声も漏れている。