「津波防災の日」の5日、県内各地でシンポジウムや出前授業などの催しがあった。参加者は、いつ襲ってくるか分からない災害へ、心構えを新たにした。
◎安全確保の3原則伝授/亘理・荒浜小出前授業
東北大災害科学国際研究所は、東日本大震災の津波で校舎が損壊した亘理町の荒浜小(児童122人)で減災をテーマにした出前授業を行った。災害時に自分の命を自分で守る大切さを、5年生児童26人に教えた。
同研究所の保田真理助手が講師となり、映像を交えて地震や津波が発生するメカニズムを説明。災害の際の安全確保3原則として(1)物が倒れてこない(2)物が落ちてこない(3)閉じこめられない-場所への避難を求めた。
児童らは部屋のイラストから災害時に危険となる場所を探すテストや、減災のポイントを記したハンカチ「減災ポケット『結』」を活用したバッグ作りなども学んだ。
保田助手は「災害時に一人一人が自分で命を守れば、家族が君たちを捜し回ったりせずに安全を守ることができる。自分だけの命ではないんだよ」と呼び掛けた。
震災を経験した児童らは、真剣な表情で授業に向き合った。塚辺啓牙君(11)は「少しの揺れでも油断できないことが分かった。学んだことを生かし、自分の命は自分で守りたい」と話した。
同研究所は6月から県内の小学5年を対象に出前授業を巡回開催しており、今回で44カ所目。
◎減災と被害理解深める/仙台でシンポ
内閣府は津波防災への関心を高めようと、仙台市青葉区のウェスティンホテル仙台で、シンポジウムを開いた。研究者の講演のほか、自治体の防災担当者の事例発表やパネル討論などが行われ、参加した約500人が熱心に耳を傾けた。
基調講演をした室崎益輝兵庫県立大防災教育センター長は「富士山の噴火や大津波など巨大災害で、被害をなくすことはできない。減災とは被害の引き算。耐震補強や避難訓練などできることを積み上げることで、被害を限りなくゼロにできる」と述べた。
高知県黒潮町は、南海トラフ巨大地震によって最大34メートルの津波襲来が予想される。同町の川田和徳南海地震対策係長は「想定が発表された当初、住民からは『もうしょうがないから逃げない』『逃げるところがない』といった声が聞こえた」と振り返った。
打開策として、(1)自力避難の可否などを記入する戸別津波避難カルテの作成(2)町職員の地域担当制導入による情報発信-など、町と住民が一体となった取り組みを紹介した。