「海の揺り籠」再生へ 松島湾でアマモ移植

東日本大震災の津波で大半が姿を消した松島湾の海草アマモを再生しようと、NPO法人環境生態工学研究所(仙台市)は14日、湾内でアマモを採取し、消失 した場所に移植した。アマモ場は水生生物が生息・繁殖する「海の揺り籠」の機能を持つとされ、震災前の豊かな海洋環境の復活を目指している。

移植には、塩釜市や松島町の漁師のほか、湾内の生物を展示していたマリンピア松島水族館のスタッフが作業に協力。アマモの植生が回復した場所で、研究所か ら作業を委託されたダイバーや水族館職員が海に潜って長さ2メートルほどに成長したアマモを採取。今度は湾内の4カ所に移動し、計約600本を植えた。
海底でしっかり根付くよう、採取したアマモ約10本ごとに土と一緒に紙製の米袋に入れ、スコップで掘った場所にそのまま植えた。約1カ月後に定着したかどうかを確かめるという。
宮城県の調査によると、松島湾内のアマモ場は震災前の2007年、約213万平方メートルあった。しかし、震災の津波で大きなダメージを受け、12年の研 究所の調査では100分の1の約2万平方メートルまで激減。13年は約7万平方メートルまで回復したが、津波で生育地の砂泥がさらわれるなどの環境変化で 再生が遅れているという。
アマモを移植する研究所の取り組みは4年目に入り、今回は独立行政法人環境再生保全機構(川崎市)の助成を受けた。塩釜市の民間人でつくる「松島湾アマモ場再生会議」をはじめ、アマモを増やして海洋環境を回復させる活動は広がりを見せている。
研究所の佐々木久雄理事(65)は「人間の力で再生のスピードを上げ、豊かな生態系を取り戻したい」と話している。

[アマモ]地下茎を延ばして生育し、細長い葉が特徴の多年生の植物。ワカメなどの海藻と違い、花を咲かせて種を作る。全国各地の砂や泥の海岸に生え、アマモ場を形成する。地下茎をかむと甘みを感じることから「アマモ」と名付けられたという説がある。

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