仙台市中心部のホテルが、独自の食文化の発信に力を入れている。培ってきた料理の技術やノウハウで食の可能性を探求し、新たな需要の開拓につなげるのが狙い。宮城、愛媛両県の食材を組み合わせた料理や仙台の地元グルメの提供など、動きは活発だ。
8日にホテルメトロポリタン仙台(青葉区)であった「美食会」では宮城県と愛媛県宇和島市の食材を使った料理が約170人に振る舞われた。
三陸のアワビと宇和島の車エビの炒め、仙台みそと宇和島麦みそのはっと、宇和島のかんきつ類のカクテルなどの特別メニュー。料理人が宇和島に足を運んで素材を選び、腕を振るった。
仙台藩祖伊達政宗の長男秀宗が宇和島藩主だった縁で実現した。森本航総支配人は「料理はその裏にあるストーリーが重要だ。仙台と宇和島を結ぶ歴史を楽しんでほしかった」と狙いを語る。
地元で親しまれる料理の知名度向上に一役買っているケースもある。
江陽グランドホテル(同)の中華料理店「龍天紅」は4月、仙台市を中心に提供店が増えている仙台マーボー焼きそばの販売を始めた。ホテルで提供するのは初めて。後藤道博常務は「地元で愛されるメニューで、地域の食文化への貢献につながる」と期待する。
ホテルの味を持ち帰りできるデリカショップを設け、発信に力を注ぐ仙台国際ホテル(同)。宿泊客の朝食には仙台近郊で採れた野菜の料理や牛タン、笹かまぼこ、ずんだ餅といった特産品を提供している。
6月2日は、フランスの伝統的な食習慣を楽しむ「アペリティフの日in仙台」の会場となる。野口育男総支配人は「仙台は新鮮な食材が手に入り、恵まれた環境にある。『牛タン以外の仙台』を発信するのもホテルの役目だ」と意気込む。